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【IPSG包括歯科医療研究会】

装着後のトラブルとその対応~義歯に問題が生じた時~

コーヌステレスコープのように強固に一体化している補綴物では、独特なトラブルが生じることがあります。

ドクターからの質問に稲葉繁先生がお答えします。

Q.上顎の右側3番から左側4番、左側7番を利用したコーヌステレスコープを作りましたが、しばらくすると床がわれてきてしまいました。何か原因があるのでしょうか?口蓋は床で覆ってしっかり安全な形にしたはずなのですが・・・・

A.テレスコープデンチャーの場合、支台歯は数歯のコーヌステレスコープにより支持されているため、緩衝作用はほとんどなく、咬合力は直接、義歯床に伝達されます。このため、構造的に弱い部分に応力が集中し、破折をきたす場合があります

義歯の設計に際し、クラスプデンチャーとは異なった静力学的設計を行う必要があります。

クラスプの場合、維持歯とクラスプは強固に固定されることはなく、わずかな動きがあるのが普通です。しかしテレスコープデンチャーの場合は、テレスコープ内冠を外冠が取り囲み、歯軸の方向に強固に固定され、わずかな動きもみせません。

したがって、咬合力はそのまま歯軸の方向に伝達し、顎骨に分配されています。しかし遊離端を含む義歯においては、粘膜の沈下量と歯根膜の許容量に差があるため、義歯部に応用を生じ、繰り返し荷重により義歯床の破折にいたります。破折線は、図のように義歯の回転軸の方向と一致するのが一般的です。

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破折を防止するためには、金属床を用いるほうがよいと思われるが、金属床といえども繰り返しの咀嚼による負荷により破折することもあるため、予想される破折方向に対し、加強しておかなければいけません。パラタルバーを用いる時は、はり構造を採用すると強化できます。

金属床を用いる場合、歯肉部にレジンを用いるため、金属部との境界に応力が集中し、破折を招く場合があります。その防止のためには、維持格子はスケルトン部に十分なレジンの厚みを確保するとともに、できれば金属部にリテンションビーズを使うか、金属との接着剤の使用を推奨します。

 

 

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幅の狭いバーは、はり構造によって強度を高めることができます。

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完成したトーションバーを応用したテレスコープデンチャー。このバーにより反対方向への力を少なくします。

今回のご質問のケースでは、床で覆わずに、トーションバーで対応し、さらにはり構造で強化をすると、破折を防ぐことができ、また、患者さんにも喜ばれると思いますので、試してみてください。

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入れ歯先進国ドイツのテレスコープシステム

入れ歯小冊子

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患者さん向けに書いたこの小冊子、歯科医の先生方からもうれしい反響をいただいております。

先日、稲葉繁先生のIPSGスタディーグループで開催された、総入れ歯の実習セミナーで先生方にお配りしたところ、「わかりやすい!」 と皆さんおっしゃってくださいました。

私は、できるだけたくさんの患者さん、そして歯科関係の方々に稲葉先生のテレスコープシステムを知っていただきたいと思っています。

日本では、コーヌスクローネだけがテレスコープだと思われていますが、実はドイツではたくさんのテレスコープシステムがあるのを、ご存じない方がほとんどです。

この小冊子を読んでいただき、皆さんが関心をもっていただければ、新しい入れ歯の技術として広まるのでは・・・と期待しています☆

ご興味のある方はぜひコチラのホームページからお申込みください。

https://www.ireba-inaba.jp/

(おひとり様1冊とさせていただきます。)

小冊子を読んでいただいた、町田市で開業されているM.M先生からこんなうれしいメールをいただきました。

 ↓  ↓  ↓

 
IPSGでテレスコープと総義歯の講習を受講した後に、「これをうまく患者さんに伝える方法は無いかな?」と思っていたところ、
由里子先生が「こんな冊子を作ったので、皆さん読んで下さい」と頂いたのが、
ピンクの表紙のかわいらしい「入れ歯で快適な生活を送るために」でした。

入れ歯に興味がある患者さんの為に、事前資料として待合室にその冊子を置く事にしました。
その日は患者Yさんに、抜歯の説明とその後の入れ歯について説明をしなければならない日でした。
来院されたYさんの目に、ピンクの小冊子が目に留まりました。早速中を覗いています。その目は真剣です。

少し冊子に目を通す時間を置いてから、診療室にお呼びしました。
それまでもYさんには、稲葉歯科医院の「入れ歯のHP」を参考にさせていただいて、ノートパソコンでお見せして入れ歯の説明をしたり、紙にペンで図を書いて説明していました。

ある程度はYさんも理解が出来たようでしたが、やはり落ち着いて考える時間が必要な様子でした。
1つは費用のこと、もう1つは年齢のこと(80以上の御高齢)。
私は、抜歯の日程と、入れ歯の種類、それぞれの細かな金額と利点・欠点を説明し、紙に書いてお渡ししました。
説明と処置を終え待合室に戻るとYさんは、また真剣に冊子に目を通しておいででした。

お会計の際に私は資料になればと思い、
「Yさん、その冊子お貸ししますから、御家でゆっくり目を通されて検討なさってください。」
と言うと、
「宜しいんですか?では是非お借りしていきます。」
と言って嬉しそうにお帰りになりました。

2週間後Yさんが来院し、
「先生、この御本有難うございました。大変良く分かりましたし為になりました。私の入れ歯も、先生が仰った様にこの入れ歯でお願いします。」
と笑顔でお話してくださいました。
この事からも、改めて紙媒体による資料は大切だと思いました。
そして、世代ごとに説明の方法は変えないと、受け入れてもらい難いとも感じました。

由里子先生、素敵な小冊子を有難うございました。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 とってもうれしいです。M.M先生、こちらこそありがとうございました!

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【IPSG包括歯科医療研究会】

鷲沢直也先生セミナー開催されました。

「歯科医院におけるITへの取り組み」

IPSG、IT顧問の鷲沢直也先生のセミナーが開催されました。 

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2010年、9月5日暑さ厳しい中、14名の先生に参加していただきました。

鷲沢先生のすばらしいところは、ITに詳しいだけではないところだと思います。

セミナーで、受講生の気持ちをつかむのがとても上手で、ところどころ笑いもとります。

そして、先生方の中には、今までの作りっぱなしにしていたホームページは一体何だったのだろうと、目が覚めたようでした。 まだホームページを持っていない先生は、今回のセミナーを聞いてチャンスだと思ったのではないかと思います。


2000年~2003年を境にインターネット革命があり、時代は大きく変化しました。

ホームページの成功事例を見ながらの説明はとっても参考になりました。

事例をみながら、「学んでほしいポイント」を 提示して、それをそれぞれの医院業務に落とし込む場合の考え方や具体的な手順などを教えてくださいました。
 
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例えば・・・・
 
歯科医院のホームページ、院内紹介などで紹介されるページの写真は誰もいないユニットなどが多いです。
成功しているホームページは、人がいる写真、人と接している写真を大切にしています。
 
活気を感じるのですね。
実際見比べると、誰もいないユニットはとても味気なく感じました。

スタッフの募集ページ一つにしても、どうやって書いたらいいのかということを詳しく解説。医療全般、患者さん心理まで教えてもらえることはなかなかありません。歯科医であり、ご自身開業されている鷲沢先生だからお話できるのだと思いました。

そして、ホームページによって診療圏は倍増するといいます。
歯科医院の周りだけを対象にしていると

「うちの周りには自費治療をする人なんていないから・・・・」

となりますが、ホームページを使うことで、その診療圏が全国になるということなど、ホームページの活用法についてお話しいただきました。

 
鷲沢先生は、ホームページが患者さん説明資料として、また定期検診の案内などに使える方法 など、たくさんのノウハウを惜しみなくお話してくださいました。
 
セミナーが終わっても、先生方はすぐに帰らないでしばらく鷲沢先生とお話をしたり、意見交換をしました。
その後いつの間にかビールがでてきて更に話が弾み、その後2次会へと続いたようです☆
 
参加いただいた先生方、一日ご苦労様でした。
そして、鷲沢先生ありがとうございました。

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【IPSG包括歯科医療研究会】

「IPSG.Jr.の会」開催されました。

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2010年8月29日、IPSG.Jr.の会が開催されました。

今回は、はじめての試みでUstreamでインターネットから動画配信をしました☆

https://www.ustream.tv/channel/ipsg-jr-meeting←ココぽちっと押してくださいね。

twitterでも解説しながら私も楽しく参加させていただきました。

https://twitter.com/yuriakubi

うまくできるかどうかわからなかったので、あまり告知していなかったのですが合計視聴者数は180名。びっくりしました!

IPSG.Jr.の会は、若い先生のミニ学術発表会で、気軽に参加できて意見交換ができる場です。

今回とてもたくさんの方から申し込みがありました。

ありがとうございます☆♪

この写真は稲葉歯科医院、山吹町に勤務している関根先生です。

 

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大石名誉会長の特別講演です。独自のブラッシング方法についてわかりやすく動画で説明してくださいました。

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開業5年目の岩田光司先生。全顎の症例など4症例を発表されて、完璧な治療ですばらしかったです☆

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この会の発起人である大石暢彦先生、やっぱりみんなをひっぱっていくパワーが違いました!

稲葉智弘先生の発表もとってもすばらしい症例でした。

入れ歯とは絶対よべないような美しさのリーゲルテレスコープの全顎症例、フランス人に片側リーゲルを治療した症例など、聞いていたら、写真とるのを忘れてしまいました・・・・

 
 

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最後にオーストリア、ウィーン大学に7年間留学していた田嶋健先生です。スラビチェック教授の右腕として活躍されていました。ヨーロッパの歯科事情についてのお話とても楽しく聞かせていただきました。

 スラビチェック教授は歯科界だけでなく国民的ヒーローだそうです。びっくりしますね。国営放送よく取材にくるそうです。日本の歯科大学教授が国民的ヒーローになるなんて聞いたことないです。

ワインがお好きだそうで、ご自身のワイナリーがあるそうです。

美味しそうなワインが写真にあったのですが、よく見ると、ラベルはスラビチェック教授のドアップ(汗)

規模が違いますね・・・・

 

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その後、そのまま研修会場がパーティー会場に早変わり。

とっても楽しい懇親会が開かれました。

 

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田嶋先生、伊庭先生、岩田先生の同級生3人組の久々の写真です☆

Ustreamを視聴してくださった会員の先生からもこんなコメントが!

長時間配信おつかれさまでした。
演者の熱気も十分伝わってまいりました。
時折、教授が映ったりして場を引き締め更にお子様の登場があったりして

とても有意義な時間でした。ありがとうございました。
 
Ustreamを使った初めての試みで、うれしい感想、大満足でした!!

 

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ヨーロッパの歯科事情

ヨーロッパの歯科事情

日本歯科新聞に掲載された記事をご紹介します。 20年以上前の新聞ですが、「高齢化先進国」についてかなり詳しく書いてあります。

今まさに日本が直面している高齢者社会を予測していた内容で、非常に興味深い内容です。

ぜひ、読んでみてください☆

 

我が国で初めて「高齢者歯科」を設けた日本歯科大学前教授がドイツ、イギリス、スイスなどヨーロッパの歯科事情を視察し、我が国の歯科医療の現状を踏まえて所感を語りました。

根本的に違う老人対策

日本で初めて高齢者歯科の診療科目ができ、わたしの専門は、この高齢者歯科となったが、これから日本は高齢者がどんどん増えてくる状態なのに、医療面では手探りの状況下にある。

そこで、高齢化社会の先輩であるヨーロッパを今回、視察してきた。ヨーロッパは長い歴史をかけて、高齢者が増えてきた。

フランスは全人口の7%が65歳以上となってから14%になるまで125年かかったといわれている。

一方ドイツでは50年ほどである。日本ではわずか26年である。このため、これから高齢者にどう対応するか手探りの状態だ。そこで、ヨーロッパでは、学生教育がどうなっているのか。あるいは在宅診療がどうなっているのか調べたいと思ってきたわけである。

わたしは、イギリス、ドイツ、スイスの3カ国を回りもう一人鈴木正直講師がフィンランドへ行った。

人口6千万人の小さな国であるが、高福祉が進んでいる。

日本はどちらかというと、社会の構成が団体的だ。フィンランドは個人単位である。このため日本としてもかなり参考にすべき点もあると視察することになった。アンケートもとってきた。まだその結果はでていない。

ヨーロッパには、高齢者のための国際的な学会がある。そこで、高齢者を専門にやっている先生に会って話を聞いてきた。また老人の施設も見てきた。

日本とヨーロッパでは根本的に違うことを、今回、改めて認識した。日本の場合、医療や技術、ハード面の器械類はとても進んでいると思う。世界的にもトップレベルにあるといえる。そこで、ハード面施設面ではそれなりに医療を行ってきている。

しかし、老人の治療はそれだけではダメで、つまり、病院を作るにしてもその周辺の施設がどうであるかが問われる。病院では、1日45分のリハビリしか、健康保険で許されていない。

寝た切り老人の原因となる大きな問題は、脳血管障害である。ヨーロッパでは一番の原因は骨折だ。大事なことは脳血管障害となったらそのあとのケアーをできるだけ早くし、寝たきりにさせないことである。

リハビリをして、体を動かして治療をするわけあるがそれを日本では、病院の中だけでやろうとする。一方、患者の生活の場はベットの上だけだ。どうしてもベットの上に寝てしまう。食事もベットの上だけだ。本来なら食堂があればよいが、それがない状況だ。

ベットの範囲しか生活の場がない。当然寝たきりになりがちだ。介護されると気持ちの上でも楽になってしまう。ヨーロッパでは寝たきりにはさせておかない。無理して起こしてしまう。

そして、ベット以外の老人たちの談話室や外に散歩する道もたくさんある。その中で、自分に課せられた運動を一生懸命やっている。できるだけベットにいる時間を少なくするようにしている。このため寝たきり老人はほとんどいないわけである。

高福祉化で医療が低迷

ドイツでは、高齢化歯科は併設されていない。しかし、軍隊があるので、訪問診療、出張診療には慣れている。ハンディーな治療器具も整っている。また日本と違ってホームドクターという制度があるため、診療所を患者さんが渡り歩くということもしない。

そこでホームドクターの役割は、一生その患者さんの面倒をみることになる。日本は、その患者さんが寝たきりになったらどの医師が診るのか決まらない。ホームドクター制度がないので、かかりつけの医師がいても、なかなかいない。

日本は近いとタクシー代が出るが、ドイツは反対に40キロ超えるとタクシー代がでる。ホームドクターが近くにいるから40キロ以上の特殊なケースしかタクシー代がでないのだ。

また日本では予防に保険の報酬が払われない。スイスの場合は。予防にしか保険が支払われない。補綴はすべて自費だ。

日本のように薄く、広くバラまくという考えはよくないと思う。特に、その点イギリスは悪かった。ナショナルヘルスサービスで揺り籠から墓場までという高福祉を行った。

あれは、歯科医にとっても評判がよくなく、患者さんにとっても好ましくなかった。財源がなくなったために、歯科は25%給付で、75%が自己負担だ。

日本は評価が低く、すべて保険なので、がんじがらめである。しかし、イギリスを見てきて、日本は良い国だと思えるようになった。つまり、日本ではまだ、患者さんに現時点で最高の治療をやろうと思えば、できる余地がある。つまり、保険がきかなければききませんよ、という余地がある。医療とは、現時点で最高の治療をやるべきだ。

保険だけというのは、技術の出し惜しみである。やってあげたくてもやってあげられないのが保険診療でのジレンマだ。イギリスでは高福祉で広くバラまいたためできない。患者さんが、健康に対する価値観さえ持てば、やれる余地が日本にはまだある。

日本は民間保険を国が認めている。歯科医にとって光が見えてきたと評価したい。民間保険を必要としないというケースでは、歯科医と患者さんとの信頼関係で行う。

予防で実績高いスイス

スイスは予防に熱心で、子供から徹底的に努めておりむし歯は10年前の75%減少した。賛否両論があると思うが、これはフッ素によるものだ。まずフッ素を食卓塩に入れたそうだ。また、フッ素の錠剤を食後に噛ませた。

だから、もしむし歯になったら自費で直しなさいという考え方だ。国が予防の方向に力を入れ実績をあげたのだからあとは自分たちでやりなさいというのがスイスである。

つまり、イギリスとスイスは正反対であった。ナショナルヘルスサービスの財源はいわゆる17%の付加価値税からきているのだ。

いずれにしても、イギリスは低迷しており、スイスのような予防を主眼としたヘルスサービスにもっちきたいとの考え方もあり、多様化しつつある。

一方西ドイツでは、国際デンタルショーに参加したが、実に立派な内容であると思った。10ホールあり1回ではとても回り切れなかった。あれだけの規模のものを見ると歯科医療はまだまだ広がりを持つものだと、強く感じた。診療部門より技工部門がかなり注目されていた。

器材の流れは注目されたがドイツでは、技工部門の引き締め行われていた。全顎のゴールドブリッジが保険でカバーされていたが、テレスコープなどは1顎4本までがゴールドでできる、というようになった。

そして、その5割を患者が払うことになった。日本はまだ、そこまでもいっていない。ドイツは技術評価がとても高い。このため、歯科医も技工士もやりがいがとてもある。

日本は総義歯が13000円程度だ。ドイツとは比較にならない。日本は保険が質より量となっている。

高質の医療を追及する

日本の場合、一番問題となるのは、6か月ごとに義歯を新たに入れることができる制度となっている。

このために、生涯に多くの義歯を作り変えることになってしまう。患者さんもだから多少合わなくてもいいんだ、という考え方をしてしまう。これは恐ろしいことだ。

これよりも、たった1個の義歯でも、それがすごく長持ちをして、口の中で具合よく機能している質の高い補綴物の方がずっとよい。

ドイツ人のそのような考えによって生まれたのがテレスコープシステムだ。

安易な治療をバラまくのではなくよい治療を行うべきだ。国民の医療費が国によって決められている以上、保険医が増加をしつづけ、それを分配しているより、全然、決まっていない医療費(自費)を、よい治療をやって、患者さんに感謝されて、報酬を受けた方が望ましい。

 

 

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21世紀に対応できるこれからの歯科医院

1.序にかえて

稲葉繁先生が日本歯科医師会、医療管理委員会の委員長を務めていた時にまとめた報告書の内容です。

(平成12年3月)

この報告書の内容を今現在読み直すと、大変興味深くこれからの歯科医療のあり方が詳しく書かれていて大変参考になるため、先生方にご紹介していきたいと思います。

「いま、歯科医師は何をすべきか問われている時代に、国民の信頼を得る絶好の時が到来したと考えるべきであろう。」(本文より)

1.【序にかえて】

日本の歯科医療は患者様が何らかの自覚症状を訴えて来院し、初めて治療が行われるという治療優先の医療である。

しかし、現在の歯科医学は病気の発症の有無や、将来予測の可能性、リスクファクターの判定などができ、また、不幸にして疾病に罹患した場合には、様々な方法での対応が可能であり、患者様に最も適した治療法を選択することができる時代を迎えた。

そのためには我々がもっている専門知識を十分話し、患者様の健康を守るために最善の方法をよく説明する義務がある。

人生80年を時代に直せば70万800時間であり、毎日確実に24時間ずつ減っている。30歳の人ではすでに26万2800時間、50歳では43万8000時間経過したわけである。

人間は人生の幕切れを迎えるまで、生きがいのある人生を過ごすことができれば幸せである。歯科医師としてやりがいのある仕事を行い社会に貢献しようえはないか。

「空虚な目標であれ、目標を目指して努力する過程にしか、人間の幸福は存在しない。」

これは三島由紀夫の言葉であるが、「夢」を実現する目標のイメージをもっていなければ、決して夢は相手から近づいてこない。しかし、そのような気持ももたずに、ただ漫然と受け身になり、相手から与えられるものだけを受けていたならば、こんなにつまらない人生はないであろう。

このようなあきらめの気持ちは、生きがいのある人生には最も敵となるものである。

ただ、「昔は良かった」と振り返ってばかりいたならば、その瞬間に死んだも同然であろう。目標のない人生ほどつまらない人生はない。

目標の設定は、とりあえずやらなければならない目先の目標、3年あるいは5年の時間的余裕のある近未来目標をもち、自分の夢を実現するための将来目標を作り、それに向かって突き進むのが理想である

我々の目標は、患者様に健康になっていただくことである。

そのためには我々が健康でなければならない。健康であるということは何物にも変え難いものであり、病気になることは自分自身もさることながら、家庭的にも社会的にも全ての面からマイナスになることである。マイナスになることに大きなお金が払われてはならない。

ここに予防の大切さが存在するのであり、小児期に歯科疾患を予防することにより、成人期以後の病気を予防することが可能になり、医療費の節減につながることが明らかになってきている。

そのため、これからの国民医療費を考えた場合、コスト・ベネフィットを挙げる最善の方法は、口腔内の健康を最優先して、全身の病気を予防することである。

いま、歯科医師は何をすべきかが問われている時代に、国民の信頼を得る絶好の時が到来したと考えるべきであろう。

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【IPSG包括歯科医療研究会】

日本老年医学会、名誉会員授与

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平成22年6月25日に稲葉繁先生が、日本老年医学会、名誉会員証を授与いたしました。

稲葉先生は日本老年医学会の理事を25年勤め、その間の4年間理事長として尽力してまいりました。

2000人の会員の中でもこの名誉会員証をいただいている方は10名ほどしかいない、まさに名誉ある証です。

「今後も日本老年医学会の向上発展のために精一杯努めてまいりたいと思います。」(稲葉繁)

 

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【IPSG包括歯科医療研究会】

IPSGの夕べ

 

☆★IPSGの夕べ☆★


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IPSGの幹部の先生方が集まり、食事会が開催されました。

みんな集まるのは久しぶりだったのですが、気の知れた仲間なので、本当に楽しい時間を過ごしました。

参加いただいた先生方、本当にありがとうございました!! 

最初にIPSG代表、稲葉繁先生から挨拶 。

娘も聞いています(笑)


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鷲沢先生からも挨拶いただきました!

鷲沢先生のセミナー2010年9月5日に 開催されます。

「歯科医院におけるITへの取り組み」です。 


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オーストリアから7年ぶりに帰ってきた田嶋健先生ご夫妻も参加いただきました!! 

写真左から大津先生、岩田先生、植木先生です、田嶋健先生ご夫妻です。 

  


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太田先生と、植木先生、田嶋紀一郎先生(日本シニアダンスのチャンピオンです!)←とっても素敵です。 


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私の夫(郁文館夢学園の体育の先生)が、途中でみんなの前でマジックショーを披露しました。
マジックってみんなを仲良く幸せにしますよね!!
みんなで、手を組んでいるところ(笑)
 
↓   ↓    ↓ 


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最後に田嶋健先生の挨拶 


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「IPSGのように和気あいあいと、仲良しなグループはめずらしいです。ぼくはたくさんのスタディーグループをみてきたけど、足の引っ張り合いばかりしているところがたくさんある。特にヨーロッパでは国と国なので、なおさら深刻です。ここは、みんな変わらないし、すばらしいグループです。」

ちょっと感激でした(泣)
 
田嶋健先生のセミナー、10月17日開催予定です!
 

また、8月29日にJr.の会があるのですが、そこでも発表してくださる予定なので、楽しみにしていてくださいね! 
 

IPSGは、あと3年後に20周年になります。
 
みんな、学術な意見の交換、本当の意味で、IPSG包括歯科医療研究会を実行してきた先生方の集まりです。
 
正統派でこれからも会全体を高めていきましょう。

  
 
 
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上下顎同時印象法

総義歯ライブ実習コース開催されました!

2010年7月17,18,19日「総義歯ライブ実習コース」が開催されました。 

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日本歯科大学前教授、稲葉歯科医院顧問、稲葉繁先生のIPSGスタディーグループのセミナーです。
総義歯の患者さんを実際お呼びして印象から装着までを3日間で勉強します。
今回の患者さんは54歳男性。バイクが趣味だそうです。ファッションも派手目で髪型はラーメンマン(ちょっと古くてすみません。)のように後ろを三つあみにしています。
40代から重度の歯周病、若い時期から歯を失ってしまいました。 
今の入れ歯にすごく不自由しているわけではないけれど、硬いものが食べれない。
サイコロステーキは絶対無理で、焼き肉だと肉が薄いから食べれるため、よく行くとおっしゃっていました。 
前歯で噛むと、後ろの歯が浮くそうです。 
 ゴマが入れ歯にはいると痛いともおっしゃっていました。

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実は私、今回のセミナー、娘2人がいつも一緒だったためすべて参加することができませんでした。
記録したDVDをあとから見直して様子をみさせてもらったのですが、やはり、DVDと実際参加するのとでは臨場感がまったく違います。twitterでもDVDをみながらつぶやいたところもあるのですが、やはり、いまいち迫力がない。
ブログ、メルマガでどのようなコメントをしようか言葉を悩んでいたところ、
「そうか!参加してくださった先生方にお聞きしよう。」
と思いつきました。
早速、みなさんにメールをしたところ、私がお伝えするよりもずっとすばらしい言葉をいただきましたので、ご紹介いたします。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★       

こんにちは

3日間お世話様でした。

とにかくスゴイの一言でした。

治療のそれぞれの過程で稲葉先生と技工士の岡部さんからの的確な説明があり非常に勉強になりました。

最後の吸着状態を実際に患者さんの口腔内で確認させていただきましたが、

今までに経験したことがない吸着状態でした。特にどんなに引っ張っても取れない下顎の吸着には感動しました。

また咬合状態もフルバランスがしっかり付与されているので、前方、側方運動時にまったく動くことがなくその状態もほんのわずかな調整(無調整といってもいいくらい )でできたことにもびっくりでした。

適合状態もみましたが、若干の辺縁をこする程度の調整のみでした。

とにかくすべてにおいて自分が見てきた義歯の中では間違いなく最上級のものであったと思います。

最後に患者様がその場でお弁当をたべてみせてくださいましたが、筍はしっかり前歯で噛み切っていましたし、こんにゃくもたくわんも何の問題もなく食べている姿を見て、さらにびっくりでした。

食後の義歯内面をみましたが、食片が入った痕跡はなく

まさに究極の総義歯でした。

この治療を自分のものにしたいですね。まずは実践をしたいと思います。

本当にありがとうございました。

埼玉県開業 K.K 先生 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★  

この文章、いただいたものそのままお伝えしています。

私がお伝えするよりもずっとすばらしい感想をいただきまして、本当にありがとうございました。 

そのほかにもたくさんのコメントをいただきました!!

稲葉歯科医院の技工士も手伝いで参加をしたのですが、

「完璧だったよ。スムーズにいつもの吸着だったし。」

と言っていました。

今回、技工は歯科工房OKABE代表の岡部宏昭先生にお願いしました。

岡部先生は総義歯の権威、稲葉先生も総義歯のすべてを学んだというDr.shleich の技工担当として日本中をまわったり、数々の有名な総義歯の先生の技工を担当してきた超ベテランの技工士です

 

  
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岡部先生のトークがまたおもしろくて先生方を魅了しました。
なかなか技工サイドの仕事をこんな身近でみることはできないので、岡部先生の手さばきにとても感心してしまいました。
もう、咬合器とワックス、レジンすべて自由自在に操る指先に憧れてしまうほどです。

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義歯装着後、先生方ひとりひとり、どのくらい義歯が吸着しているのか実際に口の中を触ってたしかめているところです。

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このセミナーの最後、ナント義歯を装着したばかりの患者さんと一緒に食事することになっています。 
患者さんが、たくわんを前歯で噛み切れるか、硬い食べ物を前歯で引きちぎれるか、みんなで観察するのです!
こわいですねー。
でもさすがは稲葉先生の総義歯。
稲葉先生は当然という顔をして、食べにくそうなものをすすめていました(笑)
家に帰ったら、サイコロステーキを食べたいそうです。

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一人ひとりに稲葉先生から修了証が手渡されました。
本当に充実した、すばらしいセミナーだったと思います。
参加してくださった先生方、本当にありがとうございました!! 
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【IPSG包括歯科医療研究会】

「総義歯の基礎と臨床」セミナー開催されました。

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「総義歯の基礎と臨床」セミナー開催されました(^▽^*)

 「総義歯の基礎と臨床」セミナー、20名の先生方に参加していただきました(^▽^*)

今回、香川県から出席してくださった先生などもい
らっしゃいました!

すでに、総義歯のDVDをみて予習して、「ストレスフリーの歯科医院づくり」「予防補綴」を読んで下さったと聞き、す
ばらしいと思いました。

たくさんの先生方のご参加ありがとうございました。

保険の入れ歯の重合方法とイボカップシステムとの違いは?

という質問に対してtwitterでのつぶやき、まとめてみました。

患者さんから保険と保険外の入れ歯の材料の違いに聞かれたら、ぜひこのような感じで回答してくださいね(^▽^*)


↓  ↓

保険の入れ歯の重合方法は、昔私たちが学生の時、フラスコをぐつぐつ煮ましたよね。

今もその方法がほとんど
だそうです。あの方法、実はレジンに気泡が入ります。
気泡が入っているとどういうことになるか・・・
割れてしまいます。

なぜ入れ歯が割れるのか?

口の中の熱の変化でレジンは膨張したり収縮したりします。気泡も熱により小さくなったり大きくなったりします。そ
れを繰り返すと入れ歯は割れてしまいます。更にレジンの厚みがでる。変色する。臭い汚れを吸収します。

イボカップシステムによる重合方法
は、重合中に常に収縮を補正できる方法です。常に圧力をかけます。なのでレジンに気泡が入りません。前はPVPMという方法もありましたが残念ながら今は
ありません。

そのため、薄く透明度がありながら、強度もあり、割れません。臭いや汚れの吸収も保険のものに比べるとほとんどありません。
薄いのに強いのです。
製作方法も全く違うので、もちろん保険ではできない、手間と材料です。

やはり、床の形をよく覚えて、辺縁封鎖が大事です!

ゴシックアーチは歯列で。印象材はシリコンでと
りますが、流れの悪いシリコン、レギュラータイプがおすす
め。パテではありません。総義歯の印象は粘膜の細かいシワまでとることはないからです。

咬合採得、ゴシックアーチ、フェイスボートランスファー、印象採得を一度でとります。その後、kavo咬合器にトランスファーします。
その後、頬、舌のコアを作ります。なのでカンは必要ありません。

今回も学生さんの参加があったので、稲葉先生いっぱい質問しました。

「咬合平面ってなんだかわかる?」

 「・・・」☜学生

「下顎の切歯点と7番の遠心咬頭
を結んだ面ですよ」

twitterでも、歯科医の先生からたくさんの反応がありました。