カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

義歯のQ&A 舌の大きい症例の対策を教えてください。

Qの大きい症例対策を教えてください。

 

A:人間生命を維持する栄養取り口として嚥下運動は口腔におけるもっとも大切な行動です。こ時無歯顎において総義歯を装着している患者では、有歯顎とほぼ同様な動きをします。

すなわち、嚥下最初段階では先を口蓋皺壁部分におしつけ、そ背を徐々に床後方に圧接し食物を咽頭に送り込みます。そ時義歯安定には後方接触が重要な役割をはたしています。

一方、人間同士コミュニケーションを図るためには言語は最も重要ですが、こ際も働きにより、様々な発音に関与しています。特にサ行は尖を口蓋皺壁に近付けと口蓋わずかな隙間から空気を流失させて発音し、タ行、ラ行は尖を口蓋皺壁に接触させ、尖を話す瞬間に口を開ける量により、発音違いをつけています。

ようには複雑な動きを行うため、そ構造も複雑になっています。
有歯顎場合は歯列内側からが歯列をわずかに圧迫していますが、歯を失うことによりが接触する結果、有歯顎ときよりも大きく見えると思われます。

さらにが大きく見える理由には、位置異常が惹起するような何らか原因があるときです。そような例うち総義歯製作に障害となる突出や唇をなめまわすような動きを絶えずする、不随意運動であるオーラルディスキネジアをもつ患者です。

したがってが前方に壱している患者とを突出させる癖がある患者についてそ対策について述べます。

義歯安定についてStrackは天然歯列植立状態と同じ場所に人工歯を配列することが最も良いと提唱しています。
すなわち歯列は外側から口腔周囲筋肉力にたいし内側からは圧力が相拮抗してバランスが保たれます。たとえ歯を失っていてもこ均衡状態は変わらず、側方からは頬筋、前方からは唇が内側に押しています。それに対しは外側支えを失い、もと歯あった方向広がっていきます。
ため歯が存在していた時と比較するとは大きく見えていることになります。
しかし頬筋、唇と均衡状態は保たれていますで、義歯製作際には人工歯配列において、こ均衡状態に並べることが理想的です。

HPfull.jpg


口腔周囲筋と舌は義歯を介在してバランスの良い一にあり、お互いに義歯の維持に重要な役割をしています。

臨床においてこ力関係を再現することは大変難しいことであり、軟らかいワックスを使用したフレンジテクニックなどが行われていますが、最近印象方法や材料発達を機会に壱連総義歯製作テクニックを考案し臨床応用しています。そ一部は大きいケースやオーラルディスキネジアある患者に対し好結果を得ているで述べてみます。

咀嚼運動は上下歯が正確に咬合すると同時に、口腔周囲筋、が強調して食物をこまかくし、だ液と混ぜて一塊とし、咽頭から食道送りこみます。嚥下に際し頬筋、唇及びは歯列に対し強い力が押し付けると同時に口腔は陰圧となり、難組織は歯を固定するように包み込みます。義歯場合も同様であるため、これら難組織力関係を印象に現すことができれば理想的です。

したがって印象は嚥下が可能な場外で採得することができればよいわけです。そためにはあらかじめ個人トレー段階で咬合口径や水平的な位置を決定した後、筋肉や動きを再現できるような印象を行えることであり、こ目的を叶えるは上下顎同時印象をすることです。

結果口腔周囲筋、唇及び昨日した形態が印象に再現できるとともに最終義歯形態指標になります。

以上ことから大きい場合には義歯安定に対し、むしろよい結果を生むことになり、多く場合維持安定に利用できます。
「もぐもぐ運動」などと呼ばれる、唇や不随意運動であるオーラルディスキネジアをもつ患者はを前に突き出したり、唇を緊張させたりするため、義歯維持安定に困窮しているケースがありますが、こような場合にも、上下顎同時印象は有効です。

特にを前に突き出すような場合には人工歯がを動きに逆らう原因になっていることが多いため、下顎前歯の舌側をすべて覆うような形態にすると結果が得られます。

また、後骨筋か部分(下顎側後縁)長くばしすぎると、運動が阻害されるため、こ部分利用は避けるべきであり、義歯に外形は十分運動を考慮に入れた形態にするべきです。

具体的には義歯安定にはサブリンガルルーム(下隙)を十分覆いにより義歯安定を行うがよい結果をうみます。

また頬棚部分も広げ過ぎると咬筋緊張により義歯安定を悪くするため。注意が必要です。さらにこ部は頬筋による維持が重要ですが、一般に義歯床研磨面形態が悪い場合が多く、特に厚みが足りないようです。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

装着後のトラブルとその対応その3~義歯に問題が生じた時~

Q.保険の義歯では、人工歯がとれてしまったりということがよくありますが、テレスコープの人工歯でそのようなトラブルを防ぐためにはどうしたらいいでしょうか?

 

A.テレスコープデンチャーは、その構造上、内外冠、連結部、床、人工歯により構成されており、通常これをレジンにて一体化し、完成します。

コーヌスクローネの場合、外冠のわずかな浮き上がりも、内冠との間の維持力の喪失につながることは明白です。したがって、床の重合に際しては、従来からのフラスコによる加熱重合法は適しません。

それは、床の部分でフラスコを上下に分離してレジンを填入するため、床の浮き上がりが生じ、その結果、内冠と外冠に間隙が生じて維持力が発揮できないためです。

これらを防止するためには、流し込みレジンをしようするか、もしくはイボカップシステムのような射出型重合法を用いることを推奨します。その際、人工歯の粘膜を一層削除し、粗面にしておくか、あるいは維持溝を形成し、機会的に結合し、強度を増して人工歯の脱落を防止します。

 

to9.jpg

外冠、床、人工歯は流し込みレジンで一体化します。

to10.jpg

人工歯の内面を粗くし、維持溝を付与します。

 

以前はテレスコープの咬合面は金属にすることが多かったのですが、最近ではコンポジットレジンの硬質な人工歯があるため、咬合面も白くすることが可能になり、審美的にも優れています。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

装着後のトラブルとその対応その2~義歯に問題が生じた時~

A.テレスコープ義歯を装着後、連結部から破折してしまいました。レジンで修理しても同じところから毎回破折してしまいます。どうしたらいいでしょうか?

Q.テレスコープ外冠と床の連結部の破損について。

連結部の構造で、外冠と金属床を鑞付する場合は、その部から破折することがあるため、十分な強化を図ることが大切です。

外冠から脚を延長した場合は、床との連結をレジンで行うが、このとき脚の上に床のスケルトンを乗せるようにしなければいけません。

 

to3.jpg

その理由は、咬合力を粘膜面に直接伝達させるよりも、外冠の脚部を介して伝達させたほうが強度が増すこと、修理の必要性を生じた場合、粘膜面の脚部のレジンを削ることにより外冠との分離が簡単にできることによります。

 

to4.jpg

スケルトンを乗せることにより、咬合力は脚に伝達します。

kya.jpg

外冠の連結とともにリンガルバーを応用することにより、連結部への応力集中を防止し強度を高めます。

最近では、連結部専用のアタッチメントも数種類のものが市販されているので、この使用も良い結果を生みます。

 

to5.jpg

to6.jpg

to7.jpg

to8.jpg

このくらいしっかりと鑞付だけに頼らずに強化しておくと、破折の可能性は格段に下がります。

やはり、レジンによる接着だけでは、難しいと言えるでしょう。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

装着後のトラブルとその対応~義歯に問題が生じた時~

コーヌステレスコープのように強固に一体化している補綴物では、独特なトラブルが生じることがあります。

ドクターからの質問に稲葉繁先生がお答えします。

Q.上顎の右側3番から左側4番、左側7番を利用したコーヌステレスコープを作りましたが、しばらくすると床がわれてきてしまいました。何か原因があるのでしょうか?口蓋は床で覆ってしっかり安全な形にしたはずなのですが・・・・

A.テレスコープデンチャーの場合、支台歯は数歯のコーヌステレスコープにより支持されているため、緩衝作用はほとんどなく、咬合力は直接、義歯床に伝達されます。このため、構造的に弱い部分に応力が集中し、破折をきたす場合があります

義歯の設計に際し、クラスプデンチャーとは異なった静力学的設計を行う必要があります。

クラスプの場合、維持歯とクラスプは強固に固定されることはなく、わずかな動きがあるのが普通です。しかしテレスコープデンチャーの場合は、テレスコープ内冠を外冠が取り囲み、歯軸の方向に強固に固定され、わずかな動きもみせません。

したがって、咬合力はそのまま歯軸の方向に伝達し、顎骨に分配されています。しかし遊離端を含む義歯においては、粘膜の沈下量と歯根膜の許容量に差があるため、義歯部に応用を生じ、繰り返し荷重により義歯床の破折にいたります。破折線は、図のように義歯の回転軸の方向と一致するのが一般的です。

to.jpg

破折を防止するためには、金属床を用いるほうがよいと思われるが、金属床といえども繰り返しの咀嚼による負荷により破折することもあるため、予想される破折方向に対し、加強しておかなければいけません。パラタルバーを用いる時は、はり構造を採用すると強化できます。

金属床を用いる場合、歯肉部にレジンを用いるため、金属部との境界に応力が集中し、破折を招く場合があります。その防止のためには、維持格子はスケルトン部に十分なレジンの厚みを確保するとともに、できれば金属部にリテンションビーズを使うか、金属との接着剤の使用を推奨します。

 

 

to1.jpg

幅の狭いバーは、はり構造によって強度を高めることができます。

to2.jpg

完成したトーションバーを応用したテレスコープデンチャー。このバーにより反対方向への力を少なくします。

今回のご質問のケースでは、床で覆わずに、トーションバーで対応し、さらにはり構造で強化をすると、破折を防ぐことができ、また、患者さんにも喜ばれると思いますので、試してみてください。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

鷲沢直也先生セミナー開催されました。

「歯科医院におけるITへの取り組み」

IPSG、IT顧問の鷲沢直也先生のセミナーが開催されました。 

hero3.jpg

2010年、9月5日暑さ厳しい中、14名の先生に参加していただきました。

鷲沢先生のすばらしいところは、ITに詳しいだけではないところだと思います。

セミナーで、受講生の気持ちをつかむのがとても上手で、ところどころ笑いもとります。

そして、先生方の中には、今までの作りっぱなしにしていたホームページは一体何だったのだろうと、目が覚めたようでした。 まだホームページを持っていない先生は、今回のセミナーを聞いてチャンスだと思ったのではないかと思います。


2000年~2003年を境にインターネット革命があり、時代は大きく変化しました。

ホームページの成功事例を見ながらの説明はとっても参考になりました。

事例をみながら、「学んでほしいポイント」を 提示して、それをそれぞれの医院業務に落とし込む場合の考え方や具体的な手順などを教えてくださいました。
 
hero5.jpg
 
例えば・・・・
 
歯科医院のホームページ、院内紹介などで紹介されるページの写真は誰もいないユニットなどが多いです。
成功しているホームページは、人がいる写真、人と接している写真を大切にしています。
 
活気を感じるのですね。
実際見比べると、誰もいないユニットはとても味気なく感じました。

スタッフの募集ページ一つにしても、どうやって書いたらいいのかということを詳しく解説。医療全般、患者さん心理まで教えてもらえることはなかなかありません。歯科医であり、ご自身開業されている鷲沢先生だからお話できるのだと思いました。

そして、ホームページによって診療圏は倍増するといいます。
歯科医院の周りだけを対象にしていると

「うちの周りには自費治療をする人なんていないから・・・・」

となりますが、ホームページを使うことで、その診療圏が全国になるということなど、ホームページの活用法についてお話しいただきました。

 
鷲沢先生は、ホームページが患者さん説明資料として、また定期検診の案内などに使える方法 など、たくさんのノウハウを惜しみなくお話してくださいました。
 
セミナーが終わっても、先生方はすぐに帰らないでしばらく鷲沢先生とお話をしたり、意見交換をしました。
その後いつの間にかビールがでてきて更に話が弾み、その後2次会へと続いたようです☆
 
参加いただいた先生方、一日ご苦労様でした。
そして、鷲沢先生ありがとうございました。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

「IPSG.Jr.の会」開催されました。

Jr8.jpg

2010年8月29日、IPSG.Jr.の会が開催されました。

今回は、はじめての試みでUstreamでインターネットから動画配信をしました☆

https://www.ustream.tv/channel/ipsg-jr-meeting←ココぽちっと押してくださいね。

twitterでも解説しながら私も楽しく参加させていただきました。

https://twitter.com/yuriakubi

うまくできるかどうかわからなかったので、あまり告知していなかったのですが合計視聴者数は180名。びっくりしました!

IPSG.Jr.の会は、若い先生のミニ学術発表会で、気軽に参加できて意見交換ができる場です。

今回とてもたくさんの方から申し込みがありました。

ありがとうございます☆♪

この写真は稲葉歯科医院、山吹町に勤務している関根先生です。

 

Jr6.jpg

大石名誉会長の特別講演です。独自のブラッシング方法についてわかりやすく動画で説明してくださいました。

Jr5.jpg

開業5年目の岩田光司先生。全顎の症例など4症例を発表されて、完璧な治療ですばらしかったです☆

Jr4.jpg

この会の発起人である大石暢彦先生、やっぱりみんなをひっぱっていくパワーが違いました!

稲葉智弘先生の発表もとってもすばらしい症例でした。

入れ歯とは絶対よべないような美しさのリーゲルテレスコープの全顎症例、フランス人に片側リーゲルを治療した症例など、聞いていたら、写真とるのを忘れてしまいました・・・・

 
 

Jr3.jpg

最後にオーストリア、ウィーン大学に7年間留学していた田嶋健先生です。スラビチェック教授の右腕として活躍されていました。ヨーロッパの歯科事情についてのお話とても楽しく聞かせていただきました。

 スラビチェック教授は歯科界だけでなく国民的ヒーローだそうです。びっくりしますね。国営放送よく取材にくるそうです。日本の歯科大学教授が国民的ヒーローになるなんて聞いたことないです。

ワインがお好きだそうで、ご自身のワイナリーがあるそうです。

美味しそうなワインが写真にあったのですが、よく見ると、ラベルはスラビチェック教授のドアップ(汗)

規模が違いますね・・・・

 

Jr2.jpg

その後、そのまま研修会場がパーティー会場に早変わり。

とっても楽しい懇親会が開かれました。

 

jr1.jpg

田嶋先生、伊庭先生、岩田先生の同級生3人組の久々の写真です☆

Ustreamを視聴してくださった会員の先生からもこんなコメントが!

長時間配信おつかれさまでした。
演者の熱気も十分伝わってまいりました。
時折、教授が映ったりして場を引き締め更にお子様の登場があったりして

とても有意義な時間でした。ありがとうございました。
 
Ustreamを使った初めての試みで、うれしい感想、大満足でした!!

 

カテゴリー
ヨーロッパの歯科事情

ヨーロッパの歯科事情

日本歯科新聞に掲載された記事をご紹介します。 20年以上前の新聞ですが、「高齢化先進国」についてかなり詳しく書いてあります。

今まさに日本が直面している高齢者社会を予測していた内容で、非常に興味深い内容です。

ぜひ、読んでみてください☆

 

我が国で初めて「高齢者歯科」を設けた日本歯科大学前教授がドイツ、イギリス、スイスなどヨーロッパの歯科事情を視察し、我が国の歯科医療の現状を踏まえて所感を語りました。

根本的に違う老人対策

日本で初めて高齢者歯科の診療科目ができ、わたしの専門は、この高齢者歯科となったが、これから日本は高齢者がどんどん増えてくる状態なのに、医療面では手探りの状況下にある。

そこで、高齢化社会の先輩であるヨーロッパを今回、視察してきた。ヨーロッパは長い歴史をかけて、高齢者が増えてきた。

フランスは全人口の7%が65歳以上となってから14%になるまで125年かかったといわれている。

一方ドイツでは50年ほどである。日本ではわずか26年である。このため、これから高齢者にどう対応するか手探りの状態だ。そこで、ヨーロッパでは、学生教育がどうなっているのか。あるいは在宅診療がどうなっているのか調べたいと思ってきたわけである。

わたしは、イギリス、ドイツ、スイスの3カ国を回りもう一人鈴木正直講師がフィンランドへ行った。

人口6千万人の小さな国であるが、高福祉が進んでいる。

日本はどちらかというと、社会の構成が団体的だ。フィンランドは個人単位である。このため日本としてもかなり参考にすべき点もあると視察することになった。アンケートもとってきた。まだその結果はでていない。

ヨーロッパには、高齢者のための国際的な学会がある。そこで、高齢者を専門にやっている先生に会って話を聞いてきた。また老人の施設も見てきた。

日本とヨーロッパでは根本的に違うことを、今回、改めて認識した。日本の場合、医療や技術、ハード面の器械類はとても進んでいると思う。世界的にもトップレベルにあるといえる。そこで、ハード面施設面ではそれなりに医療を行ってきている。

しかし、老人の治療はそれだけではダメで、つまり、病院を作るにしてもその周辺の施設がどうであるかが問われる。病院では、1日45分のリハビリしか、健康保険で許されていない。

寝た切り老人の原因となる大きな問題は、脳血管障害である。ヨーロッパでは一番の原因は骨折だ。大事なことは脳血管障害となったらそのあとのケアーをできるだけ早くし、寝たきりにさせないことである。

リハビリをして、体を動かして治療をするわけあるがそれを日本では、病院の中だけでやろうとする。一方、患者の生活の場はベットの上だけだ。どうしてもベットの上に寝てしまう。食事もベットの上だけだ。本来なら食堂があればよいが、それがない状況だ。

ベットの範囲しか生活の場がない。当然寝たきりになりがちだ。介護されると気持ちの上でも楽になってしまう。ヨーロッパでは寝たきりにはさせておかない。無理して起こしてしまう。

そして、ベット以外の老人たちの談話室や外に散歩する道もたくさんある。その中で、自分に課せられた運動を一生懸命やっている。できるだけベットにいる時間を少なくするようにしている。このため寝たきり老人はほとんどいないわけである。

高福祉化で医療が低迷

ドイツでは、高齢化歯科は併設されていない。しかし、軍隊があるので、訪問診療、出張診療には慣れている。ハンディーな治療器具も整っている。また日本と違ってホームドクターという制度があるため、診療所を患者さんが渡り歩くということもしない。

そこでホームドクターの役割は、一生その患者さんの面倒をみることになる。日本は、その患者さんが寝たきりになったらどの医師が診るのか決まらない。ホームドクター制度がないので、かかりつけの医師がいても、なかなかいない。

日本は近いとタクシー代が出るが、ドイツは反対に40キロ超えるとタクシー代がでる。ホームドクターが近くにいるから40キロ以上の特殊なケースしかタクシー代がでないのだ。

また日本では予防に保険の報酬が払われない。スイスの場合は。予防にしか保険が支払われない。補綴はすべて自費だ。

日本のように薄く、広くバラまくという考えはよくないと思う。特に、その点イギリスは悪かった。ナショナルヘルスサービスで揺り籠から墓場までという高福祉を行った。

あれは、歯科医にとっても評判がよくなく、患者さんにとっても好ましくなかった。財源がなくなったために、歯科は25%給付で、75%が自己負担だ。

日本は評価が低く、すべて保険なので、がんじがらめである。しかし、イギリスを見てきて、日本は良い国だと思えるようになった。つまり、日本ではまだ、患者さんに現時点で最高の治療をやろうと思えば、できる余地がある。つまり、保険がきかなければききませんよ、という余地がある。医療とは、現時点で最高の治療をやるべきだ。

保険だけというのは、技術の出し惜しみである。やってあげたくてもやってあげられないのが保険診療でのジレンマだ。イギリスでは高福祉で広くバラまいたためできない。患者さんが、健康に対する価値観さえ持てば、やれる余地が日本にはまだある。

日本は民間保険を国が認めている。歯科医にとって光が見えてきたと評価したい。民間保険を必要としないというケースでは、歯科医と患者さんとの信頼関係で行う。

予防で実績高いスイス

スイスは予防に熱心で、子供から徹底的に努めておりむし歯は10年前の75%減少した。賛否両論があると思うが、これはフッ素によるものだ。まずフッ素を食卓塩に入れたそうだ。また、フッ素の錠剤を食後に噛ませた。

だから、もしむし歯になったら自費で直しなさいという考え方だ。国が予防の方向に力を入れ実績をあげたのだからあとは自分たちでやりなさいというのがスイスである。

つまり、イギリスとスイスは正反対であった。ナショナルヘルスサービスの財源はいわゆる17%の付加価値税からきているのだ。

いずれにしても、イギリスは低迷しており、スイスのような予防を主眼としたヘルスサービスにもっちきたいとの考え方もあり、多様化しつつある。

一方西ドイツでは、国際デンタルショーに参加したが、実に立派な内容であると思った。10ホールあり1回ではとても回り切れなかった。あれだけの規模のものを見ると歯科医療はまだまだ広がりを持つものだと、強く感じた。診療部門より技工部門がかなり注目されていた。

器材の流れは注目されたがドイツでは、技工部門の引き締め行われていた。全顎のゴールドブリッジが保険でカバーされていたが、テレスコープなどは1顎4本までがゴールドでできる、というようになった。

そして、その5割を患者が払うことになった。日本はまだ、そこまでもいっていない。ドイツは技術評価がとても高い。このため、歯科医も技工士もやりがいがとてもある。

日本は総義歯が13000円程度だ。ドイツとは比較にならない。日本は保険が質より量となっている。

高質の医療を追及する

日本の場合、一番問題となるのは、6か月ごとに義歯を新たに入れることができる制度となっている。

このために、生涯に多くの義歯を作り変えることになってしまう。患者さんもだから多少合わなくてもいいんだ、という考え方をしてしまう。これは恐ろしいことだ。

これよりも、たった1個の義歯でも、それがすごく長持ちをして、口の中で具合よく機能している質の高い補綴物の方がずっとよい。

ドイツ人のそのような考えによって生まれたのがテレスコープシステムだ。

安易な治療をバラまくのではなくよい治療を行うべきだ。国民の医療費が国によって決められている以上、保険医が増加をしつづけ、それを分配しているより、全然、決まっていない医療費(自費)を、よい治療をやって、患者さんに感謝されて、報酬を受けた方が望ましい。

 

 

カテゴリー
21世紀に対応できるこれからの歯科医院

1.序にかえて

稲葉繁先生が日本歯科医師会、医療管理委員会の委員長を務めていた時にまとめた報告書の内容です。

(平成12年3月)

この報告書の内容を今現在読み直すと、大変興味深くこれからの歯科医療のあり方が詳しく書かれていて大変参考になるため、先生方にご紹介していきたいと思います。

「いま、歯科医師は何をすべきか問われている時代に、国民の信頼を得る絶好の時が到来したと考えるべきであろう。」(本文より)

1.【序にかえて】

日本の歯科医療は患者様が何らかの自覚症状を訴えて来院し、初めて治療が行われるという治療優先の医療である。

しかし、現在の歯科医学は病気の発症の有無や、将来予測の可能性、リスクファクターの判定などができ、また、不幸にして疾病に罹患した場合には、様々な方法での対応が可能であり、患者様に最も適した治療法を選択することができる時代を迎えた。

そのためには我々がもっている専門知識を十分話し、患者様の健康を守るために最善の方法をよく説明する義務がある。

人生80年を時代に直せば70万800時間であり、毎日確実に24時間ずつ減っている。30歳の人ではすでに26万2800時間、50歳では43万8000時間経過したわけである。

人間は人生の幕切れを迎えるまで、生きがいのある人生を過ごすことができれば幸せである。歯科医師としてやりがいのある仕事を行い社会に貢献しようえはないか。

「空虚な目標であれ、目標を目指して努力する過程にしか、人間の幸福は存在しない。」

これは三島由紀夫の言葉であるが、「夢」を実現する目標のイメージをもっていなければ、決して夢は相手から近づいてこない。しかし、そのような気持ももたずに、ただ漫然と受け身になり、相手から与えられるものだけを受けていたならば、こんなにつまらない人生はないであろう。

このようなあきらめの気持ちは、生きがいのある人生には最も敵となるものである。

ただ、「昔は良かった」と振り返ってばかりいたならば、その瞬間に死んだも同然であろう。目標のない人生ほどつまらない人生はない。

目標の設定は、とりあえずやらなければならない目先の目標、3年あるいは5年の時間的余裕のある近未来目標をもち、自分の夢を実現するための将来目標を作り、それに向かって突き進むのが理想である

我々の目標は、患者様に健康になっていただくことである。

そのためには我々が健康でなければならない。健康であるということは何物にも変え難いものであり、病気になることは自分自身もさることながら、家庭的にも社会的にも全ての面からマイナスになることである。マイナスになることに大きなお金が払われてはならない。

ここに予防の大切さが存在するのであり、小児期に歯科疾患を予防することにより、成人期以後の病気を予防することが可能になり、医療費の節減につながることが明らかになってきている。

そのため、これからの国民医療費を考えた場合、コスト・ベネフィットを挙げる最善の方法は、口腔内の健康を最優先して、全身の病気を予防することである。

いま、歯科医師は何をすべきかが問われている時代に、国民の信頼を得る絶好の時が到来したと考えるべきであろう。

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

日本老年医学会、名誉会員授与

ro.jpg

平成22年6月25日に稲葉繁先生が、日本老年医学会、名誉会員証を授与いたしました。

稲葉先生は日本老年医学会の理事を25年勤め、その間の4年間理事長として尽力してまいりました。

2000人の会員の中でもこの名誉会員証をいただいている方は10名ほどしかいない、まさに名誉ある証です。

「今後も日本老年医学会の向上発展のために精一杯努めてまいりたいと思います。」(稲葉繁)

 

カテゴリー
【IPSG包括歯科医療研究会】

IPSGの夕べ

 

☆★IPSGの夕べ☆★


kai7.jpg

IPSGの幹部の先生方が集まり、食事会が開催されました。

みんな集まるのは久しぶりだったのですが、気の知れた仲間なので、本当に楽しい時間を過ごしました。

参加いただいた先生方、本当にありがとうございました!! 

最初にIPSG代表、稲葉繁先生から挨拶 。

娘も聞いています(笑)


kai1.jpg

鷲沢先生からも挨拶いただきました!

鷲沢先生のセミナー2010年9月5日に 開催されます。

「歯科医院におけるITへの取り組み」です。 


kai8.jpg

オーストリアから7年ぶりに帰ってきた田嶋健先生ご夫妻も参加いただきました!! 

写真左から大津先生、岩田先生、植木先生です、田嶋健先生ご夫妻です。 

  


kai2.jpg

太田先生と、植木先生、田嶋紀一郎先生(日本シニアダンスのチャンピオンです!)←とっても素敵です。 


kai3.jpg

 

 
私の夫(郁文館夢学園の体育の先生)が、途中でみんなの前でマジックショーを披露しました。
マジックってみんなを仲良く幸せにしますよね!!
みんなで、手を組んでいるところ(笑)
 
↓   ↓    ↓ 


kai5.jpg

 
最後に田嶋健先生の挨拶 


kai6.jpg

 

「IPSGのように和気あいあいと、仲良しなグループはめずらしいです。ぼくはたくさんのスタディーグループをみてきたけど、足の引っ張り合いばかりしているところがたくさんある。特にヨーロッパでは国と国なので、なおさら深刻です。ここは、みんな変わらないし、すばらしいグループです。」

ちょっと感激でした(泣)
 
田嶋健先生のセミナー、10月17日開催予定です!
 

また、8月29日にJr.の会があるのですが、そこでも発表してくださる予定なので、楽しみにしていてくださいね! 
 

IPSGは、あと3年後に20周年になります。
 
みんな、学術な意見の交換、本当の意味で、IPSG包括歯科医療研究会を実行してきた先生方の集まりです。
 
正統派でこれからも会全体を高めていきましょう。