KaVoシステムによる顎関節症の診断と治療
第33回 日本顎咬合学会学術大会が開催されました。
カボデンタルシステムズジャパン共催によるランチョンセミナーにおいて、
『KaVo システムによる顎関節症の診断と治療』というテーマで稲葉繁先生が講演をさせていただきました。
会場は、国際フォーラムのB7
一番大きな会場で、当日は400名ほどの先生方にいらしていただきました。
講演を聞きながら、お弁当も食べる事ができる一石二鳥のランチョンセミナーですが、
今年は、稲葉先生の講演を集中して聞きたいので、お弁当はいりません。
という先生方が多かったといいます。
ランチョンセミナーに参加するために、こんなに沢山の先生方にお越しいただきました。
前日の理事長招宴会でご挨拶させていただいた先生方もお越しいただき、本当に嬉しく思いました。
私たちの臨床をサポートしてくれる、KaVoの咬合器、フェイスボウは欠かせない道具です。
咬合診断の出発点といっても過言ではありません。
今回は、先日開催された『顎関節症ライブ実習コース』の患者様の症例を通じて、KaVoマテリアルの素晴らしさをお伝えしました。
非常に頑丈であり、精密なプロター咬合器は、中心位のわずかなズレも再現することができます。
患者様は15年間、口が開かないクローズドロック。
動画でマニュピュレーションの様子を流し、口が開いた瞬間、先生方は身を乗り出し、どよめきが聞こえるほどでした(^_^)
開口量は、マニュピュレーション前が23ミリ、マニュピュレーション後直後には、45ミリ、ほぼ倍近く口が開くようになりました。
顎機能検査装置、KaVoアルクスディグマ2による、治療前治療後のデータの比較し、その違いをご覧頂きました。
2.3ミリの開口量の顎の動きは、顎関節結節を乗り越える事ができず、回転のみしかできませんでしたが、4.5ミリ開口した時のディグマの動きは完全に結節を乗り越え、大きな動きを見る事ができました。
素晴らしいです。
アルクスディグマが顎の動きの違いを明らかにし、先生方も大変勉強になったのではと思います。
今年も沢山の先生方にお集りいただき、本当にありがとうございました(^_<)-☆
投稿者 shige : 13:32 | コメント (0) | トラックバック
総義歯における下顎位の臨床的決定法〜顎咬合学会学術大会〜
こんにちは。IPSG事務局、稲葉由里子です。
6月27.28日『第33回日本顎咬合学会学術大会』が開催されましたので、ご報告させていただきたいと思います。
3名の著名な先生方によるシンポジウム形式で開催されました。
テーマは 『総義歯における下顎位の臨床的決定法』会場には沢山の先生方がお集りいただき、立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。
稲葉先生の講演に関して、パワーポイントや資料のお手伝いをしてくださった、IPSG副会長岩田光司先生がいつも側にいてくださったので、安心してこの日を迎えることができました。
岩田先生、いつも本当にありがとうございます。
顎間関係を決定する方法として、
咬合高径を決定する方法。
水平的位置を決定する方法。
など、様々な方法がありますが、稲葉先生は計測法を用いています。
計測法、ウィリス法の中でも、稲葉先生はレオナルド・ダビンチの比例法を用いています。
ダビンチは、人間が美しく見える基準について法則化し、素晴らしい絵画を描いています。
レオナルド・ダビンチの比例法を応用し、患者様が一番美しく見える総義歯を製作します。
内眼角から口裂の距離は
鼻下点からオトガイ下点
鼻下点から鼻根点
鼻根点から顔面と頭蓋の境
瞳孔間距離
耳介の長さ
眉上隆起の端から耳孔端
までの距離と等しい。
という法則です。
人工歯の排列に先立ち模型分析を行います。
まず模型を上から観察し、正中線を描きます。
前方では切歯乳頭を丸く囲い、その中心を決定します。
そこから矢状正中縫合を通り口蓋小窩の中点を通る線を引きます。
ここが左右の基準線となり排列します。
さらに切歯乳頭を通り矢状正中線に直角に線を引きます。
この線の延長上に犬歯が来ますから、この線をCPCライン、 即ちCanine-Papila-Canineと呼んでいます。
これは後に犬歯を排列するときの指標になります。
前歯の排列は石膏コアーを唇側にあてがい中切歯を排列します。
矢状正中縫合を正中線とし、切端の長さは唇側コアーから2~3mm見えるところに歯槽堤の形態とは関係なく位置付けます。
天然歯の切端の位置は平均して切歯乳頭の中央から7mmの所に中切歯の切端が来ます。
中切歯が決まりましたら、側切歯を排列します。
側切歯の切端は中切歯の切端から約1mm短くします。
さらに唇側はやや内側に入ります。
その後犬歯を排列しますが、これも唇コアを使用し排列します。
犬歯の位置は第一口蓋趨壁の端から2mmの所に犬歯の基底結節が位置し、 そこから7mmの所に来ますがこの時C-C-Pラインの延長上に犬歯の切端が来るように排列します。
このようにすべて計測や法則に基づいています。
このように、稲葉先生の総義歯はチュービンゲン大学、シュトラック教授のシュトラックデンチャーを原型としています。
稲葉先生が開発した上下同時印象法は、噛めるところ、即ち中心位での印象が採れる唯一の方法です。
咬合採得、中心位記録、フェイスボートランスファー、ゴシックアーチを1度で行う事により、 一連の作業を簡易化することができると同時に、患者様の情報を、 咬合器に確実にトランスファーすることが可能になります。
フェイスボートランスファーを使用することで、矢状正中とカンペル平面を読み取ることができます。
そして、シュトラックデンチャーの歯肉形成、よくご覧頂きたいと思います。
バッカルシェルフの厚み、そしてサブリンガルルームの大きさが特徴です。
上下顎同時印象法の様子もすべて動画でご覧頂きました。
こちらが、ガンタイプのシリコン印象材で上下顎同時印象した印象です。
患者様の口腔内をすべてまるごとコピーできる画期的な手法です。
日本の多くの大学で行われている総義歯はヨーロッパのギージーの流れを汲むものです。
ギージーによるシンプレックス咬合器に与える顆路傾斜は30度に設定し、 切歯路角は顆路も同様に30度に設定します。
したがって咬頭傾斜角も30度となり、フルバランスドオクルージョンが生まれます。
この時臼歯の排列はスピーの湾曲を作るように咬合平面を基準に排列します。
上下の歯槽堤の最も高いところを結んだ角度、いわゆる歯槽頂間線を基準に排列しますが、しばしば上顎の歯列が小さいときは歯槽頂を基準に排列する関係から正常に排列できない場合があります。
その角度は80度が基準で80度を超えると交叉咬合排列を行う必要があります。
いずれにしても歯槽頂を基準にした排列をするように指示されています。
その結果上顎の排列は歯列弓が舌側になり、頬の粘膜との間が空く結果となります。
そのため食物の停滞を招いてしまいます。
シュトラックデンチャーでは元歯が有った所に排列するのが原則であるため、 歯槽頂とは関係なく口腔周囲筋のバランスの良いところに排列するため、 頬側に食物の停滞を招くことを防ぐことが出来ます。
シュトラックデンチャーに使用する人工歯は咬頭傾斜25度のオルソシットを使用しますが、 咬合平面の傾斜などを考慮すると最終的な矢状顆路角は30度程度になります。
老人の下顎頭は平たんになっていることがほとんどであるため、 顆路を計測しそれを咬合器に与えても顆路が修復されることは望めないため、 平均的な顆路を与えて下顎頭のリモデリングを期待するのが良いと思います。
シュトラックデンチャーは義歯が下顎頭を誘導するというコンセプトですから、 しっかり上下顎ともに吸着する義歯を作ることが必要です。
これらの条件を満たす方法は上下顎同時印象によるデンチャースペースが再現できる私の方法が一番優れていると思います。
昨年の『総義歯ライブ実習コース』の模様を今回の学会で講演させていただきました。
(※患者様からセミナーや学会での発表の承諾をいただいております。)
患者様は、美しい口元と取り戻されました。
年齢も38歳と若く、今まで口元のコンプレックスで辛い思いを沢山されてきたと思います。
これからは、自信を取り戻し、第二の人生を歩まれるでしょう。
会場へ足を運んでくださった先生方、本当にありがとうございました。