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高齢者のQOLを守る口腔トレーニング『ラビリントレーナー』
『高齢者の食生活に対するリハビリテーション』
IPSG包括歯科医療研究会代表
私は昭和63年より大学で日本で最初の高齢者歯科を立ち上げました。 丁度日本で高齢化が始まった時です。 65才以上の人が全人口に占める割合が14%を超えると高齢化が始まったといわれます。
17%を超えると高齢化の化がとれ高齢社会となり、さらに25%に達すると超高齢社会に突入します。 現在我々は超高齢社会の真っただ中にいるという訳です。
従って僅か25年で4人に1人が高齢者ということになります。
日本の高齢者の特徴は欧米と比べ、口腔の状況が悪く食事がうまく取れないことです。
このような事情で国は平成元年に8020運動を立ち上げ、 80才で20本の歯を保とうという運動でしたが、20年経過した今でも20本保っていないのが現実です。
当時は8005で僅かに5本しか有りませんでしたが、現在でも僅か8010程度で、 なかなか20本には到達できません。
学術大会の特別ゲスト、三浦雄一郎さんも『嚥下』について大変興味を持たれ、稲葉先生と飯塚先生の講演を聞くために早くいらっしゃってくださいました(^_^)
現在85才で60%の人が総義歯になっています。
総義歯になってもその評価が低く、考えられないような安い値段で作らなければなりません。
したがって義歯をいくつ作っても合わない、食事をするときには外す、 というような事態に陥っています。
総義歯は多くの知識と技術が必要になります。
解剖学、生理学、生化学、理工学 etc.の集合した知識が必要ですがその評価が考えられない位低いのが現実です。
その結果何不自由なく噛める義歯が少ないことも事実です。
「リハビリテーション」とは本来あった状況に戻すということが目的です。
しかし日本では現状で対応しようとし、もと有った機能を取り戻し健康を保つことを考えていません。
食べられなければ米はお粥にし、副菜はミキサーにかけてトロミをつけて飲み込ませ、 元の形や食感などは二の次です。
本来の食生活とは遠いものです。
私たち歯科医師はこのような高齢者に対し、本来の食事が出来るように、 リハビリテーションの一環として、質の高い義歯を入れ、 高齢者の食生活を護ることが出来るのです。
実は今回、ご覧頂いたのは、三浦雄一郎さんのお父様、 三浦敬三さんのビデオです。
三浦敬三さんは101才で現役のプロスキーヤー、99才でモンブランを滑走されました。
その秘訣について、『食生活』と『嚥下体操』について語られていたので、稲葉先生は録画し、大切に持っていたそうです。
毎朝、嚥下体操(舌だし体操)を100回。
顔の皺がよらないためにはどういう方法がいいか、顔面の筋肉を強化したほうがいいのではとお考えになったそうです。
舌だし体操により、胸の筋肉や首の筋肉の他、顔面全体の筋肉を使う事を実感されたそうです。
そして90歳を越えると食が細くなりますが、玄米を最低50回から100回噛んでいたそうです。
今回の動画をご覧頂き、口腔機能のリハビリテーションは非常に大切だと実感していただいたと思います。
摂食、咀嚼、嚥下が元のように回復するのが、本来のリハビリテーションだと考えます。
続いて、IPSG包括歯科医療研究会、会長の飯塚能成先生の発表です♪
今回、飯塚会長は、三浦雄一郎さんがいらっしゃるということで、ぜひラビリントレーナーを紹介させていただきたいとおっしゃっていました。
飯塚会長は、稲葉先生が開発されたラビリントレーナーを用いて、施設や病院に直接出向き、摂食・嚥下訓練の普及に努めています。
事前に、三浦さんにもラビリントレーナーをお渡ししたのですが、講義が始まる前から興味津々の模様です(^_^)
最近、若い人の発音の悪さが目立つ時代であると同時に、高齢者の方は嚥下機能の低下が深刻な問題となっています。
これまで4番目だった「肺炎」による死亡数が脳血管疾患と入れ替わり、3大死因のひとつになりました。
これは、高齢者の人口が増え、誤嚥性肺炎が増加したことが影響していると考えられます。
現在、高齢者の誤嚥性肺炎に対する対策はほとんどされていないのが現状です。
私たち歯科関係者がどのように『摂食・嚥下』に取り組んだら良いのかを、具体的にお話くださいました。
とくに、飯塚会長が大切だと訴えられていたのは
『鼻呼吸』の重要性についてです。
こちらに関しましては、IPSGサイトの中のQ&Aページで詳しく解説してくださいましたので、ぜひご覧下さい。
講演の最後は三浦雄一郎さんや安生朝子先生を交えて、ラビリントレーナーの実習を行いました♪
ラビリン体操を先生方に体験していただき、その効果を実感していただきました。
ラビリン体操を行うことで、体全身に力が入ることを会場の先生方は実感してくださったと思います。
飯塚会長のお話の中でもう一つ印象的だったのは、
「今や元気な高齢者による高齢社会作りが大切」
ということです。
講演後、三浦さんから
「飯塚先生がお話されていたラビリントレーナーは素晴らしい。舌だし体操100回と同じ、もしくはそれ以上の効果が、ラビリントレーナーはわずかな訓練で効かせることができますね。」
と、大変興味を持っていただけました。
超高齢社会を迎えた現在の日本で、口腔トレーニングの重要さを強く感じた、今回の学術大会でした。
投稿者 shige : 15:17 | コメント (0) | トラックバック
IPSG Scientific Meeting 2014
今回の学術大会、実はもうお一人素敵なゲストをお迎えさせていただきました。
スーパー衛生士の安生朝子先生です(^-^)♪
つい先日、新聞クイントの表紙を飾った女性といえば、皆様ご存知のことと思います。
とても魅力的な先生でいらっしゃいます☆
▼安生朝子先生(宇都宮/藤橋歯科医院勤務 (株)ジョルノ代表)
『歯科衛生士のミッション』〜私の歯科臨床32年〜
『おもてなし』 という言葉があるのなら、綺麗な診療室で患者様をお迎えさせていただきたい。
ということで、診療室の紹介をしてくださいました。
安生先生のマイチェアー。
衛生士専用のチェアーがあるそうです。
素晴らしいと思いました。
今回、安生先生からは、衛生士が経過を追ってメンテナンスを行うことの重要性、経過観察の意味についてお話をいただきました。
最高に長い患者様で31年。
患者様にはなるべく少ない道具で負担にならないような方法で指導されているそうです。
治療が修了したら、終わりではなく、患者様が良い状態を保てるように、セットしてからが長いおつきあいというスタンスが素晴らしいと感じました。
問題は数年ではでてこないので、5年、10年、長期にわたると様々な問題がでてくるので、メンテナンスの継続は非常に大切です。
安生先生のもとには、介護度5の患者様がタクシーに乗ってわざわざメンテナンスにいらっしゃるとのこと。
これから高齢者の口腔ケアが重要になってきます。
義歯のメンテナンス、そして誤嚥性肺炎の予防にも衛生士は大きな役割を担っています。
安生先生のお父様を紹介してくださいました。
お洒落で素敵なお父様です。
そして、お父様が亡くなるまで、口から食事ができるように、一生懸命ケアをされたそうです。
超高齢社会を迎え、私たち歯科関係者の役割はとても大切になってきます。
安生先生のお話から沢山気付かされることがありました。
素晴らしい講演、ありがとうございました。
投稿者 shige : 13:36 | コメント (0) | トラックバック
IPSG Scientific Meeting 2014
IPSG Scientific Meeting 2014 開催されました♪
会員の先生方の発表をご報告させて頂きたいと思います。
トップバッターは、稲葉歯科医院のホープ、佐藤孝仁先生です。
佐藤先生は稲葉歯科医院に勤務して3年、大変丁寧な仕事をされ、患者様からの信頼も厚いです。
毎週のように研修会に参加、知識も豊富でいらっしゃいます。
今回、『目標への階段』ということでお話をしてくださいました。
3年間、稲葉歯科医院で勤務して感じた事は、抜髄されている歯がとても多く、歯周病も放置され場当たり的な治療がなされている患者様が非常に多い事。
その結果、悪くなりすぎて治療が難しくなったら、放置されている。
もしくは、後先考えない治療が多くみられると感じたそうです。
最善の医療を行うためには、技術的な事以外に、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士・スタッフがサポートし合って初めて最善な医療が提供できるのではないかと思います。
もちろん、歯科医師としての技術の向上は不可欠であると思います。
今回、佐藤先生はひとつの症例を丁寧に発表してくださいました。
患者様は顎関節症で右側クローズドロック。
マニュピレーションで、41ミリまで開口できるようになりました。
口が開いたから治ったわけではありません。
佐藤先生はひとつずつ、問題点をチェックしていきます。
KaVo のアルクスディグマを用いた顎機能検査で、治療前の状態も記録しておきます。
プロビジョナルで患者様の顎の具合を確認し、PDRインサートでバイトを上げた状態で最終補綴物を作りました。
術前のディグマ左右の側方運動にこれだけの差がありましたが、
術後はほぼ均等に。
あきらかな結果をみる事ができて大変素晴らしい症例でした。
そして、患者様からの感想をお伝えしました。
とても満足され、
「症状の治療というよりも、患者の治療をしている姿勢を高く評価します。対話があります!」
ということでした。
ひとつの症例を通じて、色々な事を学ぶ事ができました。
歯科医師の仕事は、単に症状をなくす治療ではなく、患者様の心を治すことも大切だということがわかりました。
と佐藤先生が最後にお話されたことは、大変素晴らしい気付きだと感じました。
次に発表をしていただいたのは、
キャスティックアーツ代表、技工士の中沢勇太先生です。
彼は以前、(株)モリタ歯科技工フォーラム2013の中で、国内外で活躍できるような才能をもつ歯科技工士 ということで優秀賞を受賞した、先ほどの佐藤先生同様、若手のホープです。
中沢先生はかつて、金属床を専門に作る歯科技工所に勤務されていました。
当然製作するのはクラスプのついている義歯。
当時設計についても勉強会に参加し、患者さんの口腔機能を保てるような金属床設計をできるように心がけていました。
しかし、臨床例によっては、泣く泣くもたないであろう設計をせざるを得ないこともあり、 3年支台歯が持てば成功だろうと考えていたそうです。
極力リジットなクラスプ設計をすることの重要性は理解していましたが、 クラスプの形態上、限界があることに悩まされていました。
そういった中でIPSGの学術講演会に参加させていただく機会がありました。
テレスコープシステムについてのお話を聞き、稲葉繁先生のケースには30年以上義歯が口腔内で機能しているということを知り、 素直に驚き、テレスコープを勉強して、長期間患者さんの生体の一部として 機能できる義歯を作りたいと思ったのが入会しようと思ったきっかけだったそうです。
それぞれのテレスコープシステムについて、詳しく説明をしてくださいました。
技工士の視点から注意すべき点を説明してくださったのは、歯科医師にとっても大変勉強になります(^_^)
リーゲルレバーに関して、細かい注意点もいただきました。
下顎の舌側面形態に関して、歯肉を覆ってしまうと清掃性が悪くなってしまうので歯頸部に沿わせ、その代わり金属の厚みを1.5ミリにして強度を確保すると良いというお話もありました。
コーヌスクローネに関しても、同じように技工サイドからの注意点をいただき、勉強になりました。
テレスコープシステムは、非常に高い技工技術と操作が必要な『エクストラ技工』
我が子を送り出すような気持ち思い入れで納品させていただいていると、熱いメッセージをいただきました。
中沢先生の技工は、模型がとにかく綺麗です。
そこからお仕事の正確さも伝わってきます。
患者様は、これから自分の一部になる歯が綺麗な模型で扱われているのを見ると安心されますし、大事にしてもらっていると思われるはずです。
私たち歯科医師もその点をよく見ています。
歯科医師と技工士、お互い仕事のやり取りは丁寧に大切にしたいものですね(^_<)-☆