« 2014年02月 | メイン | 2014年05月 »
『顎関節症の診断と治療』【後半】
後半はIPSG副会長、岩田光司先生の講演の内容をお伝えします(^_<)-☆
顎関節の状態がどのようになっているのか。
についての分類法について、岩田先生から詳しく解説がありました。
上記パワーポイントのように、
Stage1:関節円板に乗って動きは正常ですが、筋肉に緊張がある状態です。
目標の顎位は、Zone of Centric Relation.
Stage2:関節円板の転移があるけど、再び戻る状態です。
この状態の目標顎位は、Adaptional Functional Position On the Disk.
関節円板に乗った状態で治療することができます。
Stage3:関節円板が落ちっぱなし。復位してこない状態です。
このような場合は、補綴や義歯によって、顆頭を下げて痛みをとってあげます。
KaVoのプロターのPDRインサートを挙上することで、顆頭を下げることができます。
PDRインサートの挙上量についても岩田先生の研究内容を詳しく先生方にお聞きいただきました。
スプリントについても、
Stage1.Stage2は、リラキゼーショナルスプリントを用います。
リラキゼーショナルスプリントとは、下顎頭と下顎窩、関節円板が正常な場合、筋肉の緊張を和らげるもので、治療後の最終的な咬合形態をとるものです。
これは、フルバランスの状態で顎が自由に動く位置です。
前歯と臼歯のハーモニーがとれた状態は顎関節を守ります。
あまり前歯誘導型のようなスプリントはおすすめできません。
その理由は、前歯で誘導することにより顎関節に異常な力が入ってしまうからです。
前歯部の一か所に力がはいると、テコの作用で咬筋が収縮し、関節に力が入ります。
前歯の誘導は関節がしっかりしている正常な場合のみ付与するものなので、気を付けてください。
Stage3においては、やはりPDRインサートを用いて顆頭を下げた状態で、フルバランスで作るスプリントで対応します。
また、前歯誘導にしないといけない症例は開咬です。
開咬の場合は臼歯が誘導している形態ですから、非常に筋肉の緊張がみられます。
そして、臼歯の異常な力がはいるためすり減り、動揺などの障害がでてきます。
その場合はできるだけ関節から離れた前歯に誘導をもとめて臼歯を守るべきです。
スプリントはただ装着すればよいのではなく、症状によって咬合をカスタマイズする必要があります。
歯が噛み合わなければいいというものではありません。
最終的にいつまでもスプリントをはめているわけにいかないので、根本的な原因を咬合診断で探し、除去することが大前提です。
PDRインサートとは、上下の模型を中心位または咬頭嵌合位で付着後、下顎頭を任意の方向に動かすことができる道具です。
Pは前方に、Dは下方にRは後方に調節することができます。
KaVoの説明では、先生のバイトの位置がずれてると思われるときに、技工士が任意に調整するための道具だといいます。
稲葉先生は、PDRインサートを用いて、それ以上のすばらしい使い方をしています。
顎関節症の患者様の補綴物、義歯の製作の時に使用しています。
「顆頭を下げる」
という概念は考えもしないかもしれませんが稲葉先生は、実験でも証明しています。
顎関節症時、円板の前方転位があった場合、円板の厚みの量3ミリを顆頭を下げることにPDRインサートを利用しています。
他の用途で作ったPDRインサートですが、副産物として、すばらしい機構をもっています。
このような咬合器は数少ないと思います。
顎関節の梃子現象についてや、関節円板の脱落を検査する、レジリエンツテストについても、
わかりやすいパワーポイントを用いて説明いただきました。
岩田先生の情報量は溢れるほどで、今回用意していただいた内容は膨大でした。
質問には即答。
どんなことにも迷いなく答えてらした、岩田先生は素晴らしいなと思いました(^_^)
来月4月12.13日には、『顎関節症ライブ実習コース』も開催されます。
詳しくはこちらです!
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
お待たせいたしました!!
お忙しくてライブ実習にいらっしゃれない先生方には、
『ライブで見せる顎関節症の診断と治療』
のDVDが完成しました(^_<)-☆
▼商品内容
この作品は”顎関節症は治らない”という定説を覆した、
稲葉繁の本格的な顎関節症の治癒を、
たったの2日間で実施するライブの記録です。
6年間から7年間も顎関節症で苦しまれていた患者様の、
治療直後の感想は何よりも代えがたい歯科医の冥利に尽きるものである。
※術後の患者様の家庭療法も必見。
▼Blu-ray / DVDの収録内容の詳細はこちらから
・ライブで見せる 顎関節症の診断と治療
今回も非常に沢山の先生方にお集りいただき、誠にありがとうございましたm(_ _)m
投稿者 shige : 13:00 | コメント (0) | トラックバック
『顎関節症の診断と治療』開催されました【前半】
IPSG事務局、稲葉由里子です。
2014年3月9日『顎関節症の診断と治療』セミナー
稲葉先生と、IPSG副会長岩田光司先生のコラボセミナーが開催されましたので、【前半】【後半】に渡り、ご報告させて頂きたいと思います。
現在、日本では顎関節症とオクルージョン(咬合)は関係ないと言う風潮があります。
本当にそうなのでしょうか?
ヨーロッパでは顎関節症とオクルージョンの論文、書籍が沢山でています。
ドイツでは、マールブルグ大学のLotzmann教授、オーストリアではウィーンのSlavicek教授もオクルージョンからのアプローチで顎関節症を治療しています。
こちらは、ラウリツェン、スチュアート、そしてPK.トーマス。
ナソロジーの三大巨匠です。
中心位の概念が違っていたとしても、ナソロジーの全てが間違っていたわけではありません。
歯科医師であるならば、ナソロジーは一度はきちんと学ぶべき大切なことです。
と稲葉先生から話がありました(^_^)
稲葉繁が、ドイツへの渡独を決意した、顎関節症の権威 Prof.Schulteの論文について、お伝えさせていただきました。
セミナーの中で、
「これ、一番大切です。」
と伝えるほど、重要な内容です。
ぜひ、読んで頂きたいと思います(^_<)-☆
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
【機能分析と理学療法の目標】
ー442名の顎関節症患者の経験からー
Gezielte Funktionsanalyse und Physio-Therapie-Erfahrugen bei 442 Patienten mit Myoarthropathien-
W.Schulte
Dtsh Zahnarzt Z,27:779-795,1972.
新しい論文ではありませんが、当時、顎関節症の治療に取り組んで間もない頃で、診断から治療法がまだ不透明であった時に、各種の論文を漁っていた際に出合った論文で、慣れないドイツ語を読み、大変システム化し、明快に診断から治療法までを、多くの患者をもとに体系づけたもので、1970年のW.Schulteの論文に出合い、頭の中が整理されたことを今も記憶しています。
またドイツへの留学を決意させてくれた私にとって忘れる事の出来ない論文です。
1978年にドイツチュービンゲン大学に留学し、Prof.W.Schulteの講義を2週間にわたり、早期から夜遅くまで聴講し、その整理された内容の高い講義に感銘しました。
442名の顎関節症の患者を詳細に分析し、診断から治療法をシステム化し、90%の症例で、この方法が応用できる事を述べています。
患者の性別では、女性が71.2%、男性が28.8%であり、年齢層を10才ごとに分けると21才から30才までの患者が最も多いのがわかりました。
診断は疼痛および運動障害の診査を行い、自発痛、運動痛および圧痛が左右どちらにあるか、また開口時の下顎の偏位が左右どちらにあるかをもとに、チャートを用いて、5つの典型的なシェーマを選択し、そのシェーマの内容と患者の症状および口腔内の状態を比較し診断します。
1例をあげると、患者の主疼痛側が右側にあり、下顎の側方への偏位が右側に存在する場合、上記のシェーマを選択します。
この場合の疼痛の原因としては、右側の運動に作用する筋の過緊張があり、早期接触および滑走右側に向かう、また就寝時の体位と主咀嚼側かどちらを質問します。
最大開口位で顎関節のレントゲンを撮影してみると、右側は前方に移動せず、左側は、前方に滑走しているはずです。
口腔内の観察では、このような患者では、右側においては、
- 上顎の智歯の挺出
- 下顎智歯の慢性炎症
- 側切歯から第一大臼歯にかけての偏心咬合とそれにともなう咬耗面がある
- 咬合支持を失っており、左側への偏心咬合がある
- 下顎智歯の挺出
- 上下顎大臼歯部の早期接触が認められる
- 義歯の沈下等の咬合不均衡がある
右側に痛みを訴えたならば、さらに最大開口していただき、下顎の側方偏位の方向を調べてみます。
右側に偏位が認められた場合は、上記の図に示した状態が認められる事が多いはずです。
多くの場合、顎関節のX線写真では、最大開口位で右側はほとんど位置の異常は認められないか、あるいはわずかに後方にあり、左側は顆頭が前方に位置しています。
口腔内を観察してみると、右側では下顎の智歯が欠損し、上顎の智歯が挺出しています。
左側に目を移してみると、下顎智歯の挺出があり、下顎の前方運動を妨げています。
大臼歯部の咬頭干渉や、不正なテコ現象、早期接触、不正咬合や義歯の異常な咬耗が認められることが多くあります。
このような場合、筋の触診にいては、右側では咬筋、側頭筋、顎二腹筋後腹、後頸筋群に、左側では側頭筋および外側翼突筋に圧痛が認められることが多いです。
以上のように、
主疼痛側が右側にあり、開口時の右側への偏位が認められる場合にかなり当てはまる事が多いのですが、同様の症状は主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が右側にある場合も認められます。
これとは逆に、主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合や、主疼痛側が右側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合は、前記の状態とは正反対になります。
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
まずは、患者様がいらっしゃったとき、口を開いていただく。
S字状カーブから、様々なことを読み解くことができるようになって頂きたいと思います。
ということで。
後半は IPSG副会長岩田光司先生の講演をお伝えします(^_<)-☆
投稿者 shige : 15:26 | コメント (0) | トラックバック
顎関節症の権威 Prof.Schulteの論文について
IPSG事務局、稲葉由里子です。
稲葉繁が、ドイツへの渡独を決意した、顎関節症の権威 Prof.Schulteの論文について、お伝えします。
顎口腔系の機能障害(Funktionstoerungen)の診断と治療で高名なTuebingen大学のProf.Schulteは、442名の治癒例を詳細に分析し、独特な診断・治療法を確立しました。
稲葉先生はSchlteのシステム化された治療方針に従い、治療を行い効果をあげています。
もし右側に痛みを訴えたならば、さらに最大開口していただき、下顎の側方偏位の方向を調べてみます。
右側に偏位が認められた場合は、上記の図に示した状態が認められる事が多いはずです。
多くの場合、顎関節のX線写真では、最大開口位で右側はほとんど位置の異常は認められないか、あるいはわずかに後方にあり、左側は顆頭が前方に位置しています。
口腔内を観察してみると、右側では下顎の智歯が欠損し、上顎の智歯が挺出しています。
左側に目を移してみると、下顎智歯の挺出があり、下顎の前方運動を妨げています。
大臼歯部の咬頭干渉や、不正なテコ現象、早期接触、不正咬合や義歯の異常な咬耗が認められることが多くあります。
このような場合、筋の触診にいては、右側では咬筋、側頭筋、顎二腹筋後腹、後頸筋群に、左側では側頭筋および外側翼突筋に圧痛が認められることが多いです。
以上のように、
主疼痛側が右側にあり、開口時の右側への偏位が認められる場合にかなり当てはまる事が多いのですが、同様の症状は主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が右側にある場合も認められます。
これとは逆に、主疼痛側が左側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合や、主疼痛側が右側にあり、下顎の偏位が左側に認められる場合は、前記の状態とは正反対になります。
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
次回は、Prof.Schulteのシステム化された治療方針についてお伝えします(^_<)-☆