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上下顎同時印象法

2013『総義歯の基礎と臨床』開催されました【前半】

こんにちは。

IPSG事務局、稲葉由里子です。

6月23日『総義歯の基礎と臨床』セミナーが開催されたのでご報告させていただきます。

今回も全国から先生方にお集りいただきました。

ほとんどが、稲葉先生の総義歯のセミナーを初めて受講される先生方で、色々な視点から学んでいただけたと思います☆

内容盛りだくさんだったので、前半、後半の2回にわけてお伝えいたします(^_^)


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私たちは、総義歯の患者様をいかに少なくするか、ご自分の歯で噛んでいただけるように、できるだけ総義歯になるのを食い止めなければいけないということを常に意識しなければいけません。

総義歯とは、今までの歯科医療の敗北だということをわかっていただきたいと思います。 

歯が無くなるという事は、保存ができなかったということです。 

最近、介護食の宣伝は、舌でつぶせる。歯肉で噛める。

というものばかりです。 

介護食でこのような宣伝がある限り、歯科医療の敗北としか言えないと思います。 

残念ながら、歯をすべて失ってしまった方は大勢いらっしゃいます。 

歯を失ってしまった方に、保険の義歯は問題外です。

安い義歯を作らされるしわ寄せは、ラボにいっています。  

日本の保険制度の一番良いところは、自費診療ができること。

保険の義歯は限界があります。 

最善の知識と技術を提供できる技術を今回先生方に身につけていただきたいと思います。 


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日本の総義歯の技術は実は非常に古く、1583年に作られています。

当時としては長寿の74歳で往生した紀伊・和歌山の願成寺の草創者・仏姫の拓殖の木から作った木床義歯です。

当時は現在のように優れた印象材や模型材もなく、咬合器もない時代に、適合性に優れ、噛める義歯を作ることができたものであると、感心してしまいます。

当時の義歯の製作方法を調べてみると、非常に合理的であり、仏教芸術の伝統を受け継いでいることがうかがえます。

その製作法の鍵は、蜜蠟を使った印象採得と咬合採得を同時に行うことです。

これは蜜蠟を鍋で温め、それを一塊として患者さんの口腔内に入れ、咬合位を決定した後に口腔内の形を採得するというものです。

一塊にしたものを上下顎に分けたのであるから、正確な咬合位の再現が化のになるのは当然です。 

稲葉先生は日本の歴史から総義歯を学び、上下顎同時印象ができる方法がないかずっと模索していました。

そしてガンタイプの印象材が開発されたのを機に、最終印象を上下顎同時印象をする方法を開発します。 

BPSではスタディーモデルを上下同時に印象をしていますが、最終印象ではありません。

稲葉先生の総義歯は、世界最古の木床義歯による上下同時印象、そして化石の原理が原点です。

化石は一つのものを二つに割っても、必ずもとに戻ります。

一個の石をふたつに分けると魚の化石とプリントされた陰型が現れますが、重ねると必ずひとつに戻ります。

総義歯も一緒でひとつの印象を咬合器上で、ふたつに分け、最後に戻すという考えです。

これまでの総義歯はギージーによる歯槽頂間線法則が基本となっていました。 

ですが、歯槽頂間線法則では上顎の頬側のサポートができません。

上下顎同時印象をすると、デンチャースペースが再現できるので、頬側のサポートが可能となります。 


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従来の総義歯のウィークポイントについて 

  1. 患者自身の筋圧で印象不可能
  2. 平均した圧力で印象できない
  3. 機能時の口腔周囲筋の印象が不可能(フレンジテクニックはかなりラフです)
  4. 嚥下ができない
  5. 上下別々に印象を採得するため誤差を生じる(翼突口蓋法線が伸びてしまいます。義歯の脱落の主なものは粘膜面にエアーが入ってくることで、上顎は口蓋からはずれます。上顎の口蓋は封鎖がむずかしいからポストダムをつけ、下顎は臼後三角までしっかり伸ばします)
  6. 来院回数が多くなる
ということが上げられます。
 


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上下顎同時印象法を行って、総義歯を製作するシステムの利点はつぎのとおりです。

  1. 咬合採得、ゴシックアーチの描記、フェイスボートランスファー、上下顎同時印象をわずか1回で行うため、合理的であると同時に来院回数の減少が図れる。
  2. 咬合採得した位置で最終印象を行うため、顎位の誤差を生じない。
  3. 印象採得中に嚥下を行わせるため、口腔周囲筋の印象採得が可能である。
  4. 最終印象をフェイスボートランスファーし、咬合器に付着できる。
  5. 印象面に口腔周囲筋、口唇、舌の形態を再現することができる。
  6. ニュートラルゾーンに人工歯を排列できる。
  7. サブリンガルルームを利用することにより舌による良好な維持が期待できる。床を後舌骨筋窩まで延長する必要がなく、舌の動きを阻害することがない。
  8. イボカップシステムの応用により重合収縮を補正し、適合が良好なため、ウォーターフィルム減少を得ることができ、維持がよい。
  9. 顎堤が極度に吸収している症例でも、頬筋、口唇、舌の維持ができる。
さらにこのシステムを応用し、オーラルディスキネジアや、脳卒中後の麻痺のある患者さんに対してよい成績を上げています、顎関節症を伴う総義歯患者においてもよい成績をあげています。
 


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咬合採得は今までは蝋堤でやっていました。

最近、開発したSIバイトトレーを使うようになってから、咬合採得なんて面倒くさい事やる必要がなくなりました。

と稲葉先生(^_^; 


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そして、 昨年に引き続き、今回も、近代総義歯学の基礎を築いた、スイスの歯科医師のAlfred Gysi(アルフレッド・ギージー)の歴史を勉強しました。

Gysiはカンペル氏の平面のコンセプトを作ったり、 シンプレックス咬合器、トゥルバイト人工歯の開発など、沢山の業績を残しています。

今回、90年前の『ギージーフィルム』(和田精密技研)をご覧いただきました。


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ピッチングテストの様子です。 


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ギージーが咬合器に付着している様子です。


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切歯路角を調整しています。

90年前の総義歯の制作方法、今はどうでしょうか。

これ以上の総義歯を作っていますか?

せめて、これを超えないといけないと思います。

ということで、後半に移ります〜♪ 

 

 

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