こんにちは。
IPSG事務局、稲葉由里子です。
2013年3月3日、『顎関節症の臨床と治療 稲葉繁+IPSG副会長岩田光司コラボセミナー』が開催されたので、ご報告させていただきたいと思います。
とてもボリュームのあるセミナーだったので、前半と後半に分けてお伝えいたします☆♪
現在、日本では顎関節症はオクルージョン(咬合)とは関係ないと言う風潮があります。
アメリカのA.A.O.P(アメリカンアカデミーオブオロフェイシャルペイン)という団体が、顎関節症における咬合の重要性が低くなったと伝えたことに影響されているものと思われます。
本当にそうなのでしょうか?
ヨーロッパでは顎関節症とオクルージョンの論文、書籍が沢山でています。
ドイツでは、マールブルグ大学の、lotzmann教授、オーストリアではウィーンのSlavicek教授もオクルージョン(咬合)からのアプローチで、顎関節症を治療しています。
ヨーロッパでは、顎関節症とオクルージョン(咬合)は密接に関わっていることを前提としています。
咬合と顎関節症は関係ないからとして、
ただ単に、口の中をみる。模型を手で合わせて異常なし。
なんてことは本当にナンセンスだと思います。
フェイスボートランスファー、スタディーモデルもとらないで咬合は関係ないなんて、決してありえないと感じます。
稲葉先生は、40年間の臨床経験で、咬合からのアプローチで顎関節症の治療を行ってきました。
今回のセミナーではまず、どのような経緯で稲葉先生が治療を行ってきたのかという話がありました。
これは世界で最初のワインのコルクで作られたスプリントです。
否定はされていますが、関節を下にさげるという、コステンのアイデアはすごいと思います。
◆咬合を念頭においた顎関節症に対する考え方の変遷
●1930年代のCosten Syndromeは低位咬合による顆頭偏移が難聴をはじめとするさまざまな症状を引き起こし、その治療法として咬合拳上が有効であるという考え方が受け入れられました。
●Schuylerをはじめとして、ただ画一的に咬合拳上するのではなく下顎運動時の影響を重視し、昨日的に咬合を考える人もいました。
●咬合を単に器械的にとらえるだけでなく、顎機能あるいは歯周病との関係を重視した生理的咬合の考え方を主張する術式は、Ramfjord,Posselt,Krogh Poulsen,石原などの傑出した学者を生みました。
●1970年代に入ってLaskinの影響を受け、咬合が軽視され、筋機能障害が重要視されましたが、Farraerは臼歯部の咬合支持の欠如が関節円板障害の原因として重要であることを強調しました。
●1970年代から80年代にはWeinberg,Gerberは顆頭偏位と咬合異常に関するX線的研究が発表され、クリッキングやロッキング症状として現れる顎関節内障が注目を集めるようになりました。
●1980年代は顎関節内障全盛となり、CT、MRIを使った診断技術が向上しました。
●1990年代になってふたたび咬合異常が軽視され、疼痛を重要視するようになりました。これに対し、日本、ヨーロッパでは顎機能障害の病因として咬合異常を重視する考えで、確実に診断方法が進歩しています。
現在ではストレスや習癖を考慮した合理的咬合治療がおこなわれています。
Niles F.Guichet、(ギシェー)は稲葉先生が崇拝する先生です。
ギシェーは、1957年Arne Lauritzenより咬合に関する疾患と治療法について学びました。その後Charles E.Stuartの門をたたき、咬合について特に顎運動の精巧さと顎運動が咬合面に与える影響について深く学ぶことになります。
時を同じくして、John Woehler,L.D.Pankeyに影響を受け、歯科治療を見極める目を教えられました。
その他D'Amico,Earl Pound,Peter Neff,Parker Mahan,P.K.Thomasら多くの方々の影響を受けました。
そのためこれらの人の考えをまとめ、Guichetの理論を作り上げました。
その結果、
1.咬合の各学派の考え方をうまく取り入れた理論です。
2.常に実践的です。
3.咬合理論の統合と普及を行いました。
4.咬合病の考え方を発表し、咬合と姿勢、筋骨格系との関連をさせたこと、X線診断を関連付ける業績を残しています。
Dener Mark Ⅱ・D4H・D4A・D5Aの開発者でもあります。
「この写真は、実際に私がギシェー先生の実習を受けた時のものです。」
左上の写真は稲葉先生が、ドイツ留学時、カールスルーエで、P.K.Thomas のワックスコーンテクニックの実習を受けた写真です。
葉巻をくわえ、ウィスキーをグイっと飲みながら実習していました。
彼はハリウッドで開業していて、バチカンで聖母マリアのキリストの腕が、折れてしまい、彼は財を投げうって修復したことでも有名です。
そしてその右は、クローポールセン先生です。
彼からは筋触診法を学びました。
右下はジャンケルソン先生。
やはり、ドイツに留学していたときにフライブルグ大学で研修を受け、マイオセントリックの概念を勉強しました。
左下は、ラウリッツエン先生。
ナソロジーを学びました。
チャールス・E・スチュアート先生は、アメリカでナソロジーの開祖として有名な人で顎の運動と歯の形態などのナソロジーの基礎を勉強し多くの影響を受けました。
スチュアート先生の実習は全部で3回受けました。
こちらは、スチュアート先生の奥様の口の中の写真です。
アンテリアガイダンスがきちんと付与されていたそうです^_^
こちらが、稲葉先生がドイツへ留学することになった大きなきっかけとなった論文です。
チュービンゲン大学の口腔外科、シュルテ教授の論文で、大変衝撃を受けたと言います。
素晴らしい内容で、シュルテ教授の講義を受けたくて、チュービンゲン大学に留学した、稲葉先生。
朝8時から夜の9時まで毎日2週間、顎関節症のレクチャーを受けました。
こちらは、チュービンゲン大学独特の顎関節症のスプリント、Tuebingerintersepterです。
この他にも、てこの原理や、シュルテ教授の顎関節症のフローチャートなど、盛りだくさんの内容でした。
後編に引き続きます!!