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「顎関節症のライブ実習コース」開催されました
今回参加してくださった先生方はみんな前回の「顎関節症の診断と治療」に参加いただいた方だったので、アットホームな雰囲気で楽しく勉強することができました。
6年間1,9センチしか口を開くことが出来なかった患者さんが、6年ぶりに口が開きました。
慢性的なクローズドロックだったので、私は少し不安でしたが、順序立てて稲葉先生は思った通りに患者さんの口を開けました。
患者さんもすごくびっくりしていたし、大変感謝されました。
患者さんは33歳女性、6年前から口が開かなくなりました。開口量は1,9センチ、歯ぎしりくいしばりがあるため朝、筋肉の疲労があるそうです。
患者さんはインターネットでいろいろ調べて、手術の可能性もあると書いてあり、相談するのがとても怖かったそうです。
問診後、レントゲン撮影、そしてKaVo Dental systems Japan のディグマ2による顎機能検査をしました。初診の状態を把握するためです。
ディグマ2は超音波測定によるデジタル式顎運動計測装置です。
http://www.kavo.co.jp/products/imaging/arcusdigma2/
ディグマ1にくらべて何が違うのでしょうか。
まず、パソコンとディスプレイが直接つながるようになったことが一つ。
二つ目はセンサーの数とセンサーの位置が違うそうです。
電波を受ける数が増えて、前の方にセンサーがあったのが歯列にそわせてセンサーをつけたため、測定の効果が飛躍的にあがり、測定のスピードもあがったようです。
三つ目は上顎の位置決めが眼窩下点をとることによってより精度をあがったとKavoの方がおっしゃっていました。
さて、口を開くことができないと上下の歯列の印象がとれません。
今回の患者さんは6年前からのクローズドロックなので、急性なものに比べ、開けるのが難しいです。
慢性的なクローズドロックは筋肉や関節が固まっているので、温湿布が非常に効果があります。
ディグマの計測のあと、まず、顎二腹筋の温湿布を行いました。
タオルを温めてサランラップでくるみます。10分ほど温めました。
その後、ドップラーで聴診。
左側にクリック音がありました。
そして、口を開けるために患側にロールワッテを2つ噛ませて反対側へ顎をぎゅっと移動させます。
クローズドロックで落ちた円板を復位させる方法です。
すると、本当に大きく口を開けることができました。
患者さんは関節に円板がのるときに、バキバキっと音がしたとおっしゃっていました。
6年ぶりに口を開けることができた患者さんはびっくりしたのと同時にとても喜んでいらっしゃいました。
やっと口を開くことができたので、上下の歯の印象です。
今回の印象はマールブルグ大学のLehmann教授が開発した、コレクトア・アップドュルック(精密印象)でとりました。フェイスボートランスファー、中心位、チェックバイトの記録をしてKaVoのプロター7に模型を付着する方法を勉強しました。
コレクトア・アップデュルックの精密印象法をyoutubeにアップしました☆
稲葉先生の目線から動画を記録したので、ぜひご覧ください!
咬合器で中心位と中心咬合位のズレを調べ、側方位の干渉、原因をみつけました。
咬合器で印をつけた歯の咬合調整です。
歯は高いところを削るのではなく、咬頭が通りやすいように溝をつけたり、窩を広くしてあげることです。
患者さんは快適なかみ合わせになってとても喜ばれていました。
開口量も4センチ、ほぼ倍も開きました。
その後、スプリントの製作法のデモも行いました。
最後にディグマで記録を再度とり、治療前治療後を比較しました。
ディグマの治療前治療後の劇的な違い、ビフォーアフターは一夜にしてまるで別人のデータでした。
何よりも患者さんが大変喜んでいただいた事をうれしく思います。
顎関節症の症状がなくなったことで、今までよりも耳が聞こえるようになった。目が開くようになった。などびっくりするようなコメントもいただきました。
動画も記録したので、後日DVDとして発売される予定です。
楽しみにしていてくださいね☆
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2日間参加してくださった先生方、本当にありがとうございました!!
そして、IPSGのスタッフの先生方のおかげで今回のような充実したセミナーを開催することができました。
ご苦労様でした☆♪
投稿者 shige : 10:23 | コメント (0) | トラックバック
「顎関節症の診断と治療」セミナー開催されました
こんにちは。IPSG事務局の稲葉由里子です。
今回の震災の影響で3月20日から延期になった「顎関節症の診断と治療」セミナーが4月3日に開催されました。
当日、どうしても参加できない先生もいらっしゃいましたが、このような状況の中、無事に開催されたことをうれしく思います。
全国各地から参加いただきました。東京に限らず、香川、広島、仙台、大阪、静岡などから今回のセミナーのためにお集まりいただき、本当にありがとうございました。
テレスコープシステムのセミナーを受講した方が今回のセミナーを興味深く聞いてくださったり、国家試験を合格したばかりの先生、学生、そして私の大学の同級生まで皆で楽しく受講できたと思います。
今回のセミナーの中で、稲葉先生は、咬合の重要性、特に顎関節症との関わりについて強く訴えました。
最近の歯科界の傾向で、咬合と顎関節症は関係がないという流れがありますが、本当にそうでしょうか?
私たち歯科医師にしか治療できない『咬合』という分野があまりにも軽視されていると思います。
咬合について、改めて見直す必要があると感じました。
そして、咬合と並び、顎口腔系の筋肉の観察は顎関節症では非常に大切なことです。
今回のセミナーでは様々なパターンからそれを学びました。
例えば、右と左で頬の大きさがあきらかに違う場合、歯ぎしり、くいしばりによる咬筋肥大である可能性が大きいです。
咬筋は閉じる時に使う筋肉です。
ちなみに口を開ける筋肉、閉じる筋肉覚えていらっしゃいますか?
- 口を閉じるときに使う筋肉(閉口筋):咬筋、側頭筋、外側翼突筋(上頭)、内側翼突筋
- 口を開けるときに使う筋肉(開口筋):顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋、外側翼突筋(下頭)
歯ぎしり くいしばりにより、口を閉じる筋肉、咬筋が肥大します。それと同時に下顎骨筋突起に付着している側頭筋もひっぱられていることが多く、たびたび側頭筋の片頭痛がみられます。
反対に、クローズドロックのときには口を開ける筋肉の痛みを伴います。
顎二腹筋がいたくておさえてる方とても多いです。
筋肉の触診も顎関節症の診断でとても重要なことがわかりました。
クローズドロックの患者さんのマニュピレーションの方法もDVDでわかりやすく説明がありました。
無理やり口を開けるなんて、患者さんは死ぬほど痛いです。
クローズドロックという状態は関節円板が前方に転位して口を開けるときにつっかえている状態です。
中心位の状態で顆頭が回転だけしています。開口量は2,5センチ以内です。
左右の顎関節のどちらがクローズドロックしているのか調べるテストが2つあります。
もちろん口を開いた時に痛みがある方だと思っていただければいいのですが、慢性的な場合、私たちも診断できない場合があります。
その時に有効なのが、レジリエンツテスト、プロボケーションテストです。
レジリエンツ(Resilienz)テストとは例えばと右側に4~5ミリ程度のボクシングメタル(アルミの箔)を庄臼歯部で噛ませて、左側で噛んでもらいます。関節円板にのっているのであれば上下の歯は近づいてきて接触します。
もし、関節が落ちているのであれば上下の歯は開いたまま近づきません。
なぜなら、関節窩と下顎頭が関節円板を介していないため接触してるためです。
稲葉繁はこのテスト、ドイツ、チュービンゲン大学のシュルテ教授から教わったそうで、日本ではまだみたことがありません。
慢性化してるクローズドロックの方でどちらが落ちているのか判断するときに非常に有効です。
プロボケーションテスト(症状誘発テスト)はワッテや割り箸のようなものを片方の顎ずつ噛んでもらい、痛みの閾値を調べる検査です。クローズドロックの状態になったばかりの初期の段階だと特に反応がでやすく、このテストも判断するのに有効です。
稲葉繁がドイツチュービンゲン大学に留学するきっかけとなったProf.W Schlteの論文について説明がありました。
442名の患者さんを詳細に分析し、診断から治療法をシステム化したものです。
このような論文がすでに30年以上も前に発表されていて、稲葉先生はほとんどの症例はこのパターンに当てはまると説明がありました。
参加いただいた先生方から今回のセミナーの感想をいただいたので、一部ご紹介したいと思います☆♪
◆いつも通り快適ですが、僕個人の希望としては、講演時間がもう少し長ければいいなと思います。
◆顎関節症に関した幅広い知識を初めて学びました。稲葉先生の長い臨床経験に基づいた講義は説得力があり、本当に勉強になりました。基本となる咬合をあらためて学び臨床に役立てていきたいです。
◆顎関節症をシステム化した治療方法があることを知ることができてとても勉強になりました。
大学では咬合治療では治らないと教わってきているので、自分は咬合で治せるようにしっかりと勉強していきたいです!
◆勉強する機会をいただき、感謝しています。オクルージョンの正しい知識を身につけることが必要だと痛感しました。
今日はどうもありがとうございました。
◆本日はありがとうございました。
顎関節、筋肉の運動、咬合との関連性がよくわかりました。筋肉の運動など、これからの日々の診療に役立たせていきたいと思います。
◆咬筋肥大のしくみ、クローズドロックの円板ののせ方、てこの原理で3級のてこを目標とする治療、円板が落ちる原理などがかなり理解できました。
◆学生の時からお世話になって、今回の講習は3回目ですが、少しずつでも理解できてきました。今年からようやく歯科医として少しでも得た知識を患者さんに実践できればと思います。
とても楽しく参加させていただきありがとうございました。そして、今後もよろしくお願いいたします。ありがとうございました。感謝いたします。
◆とても勉強になりました。内容が濃く私には難解なため、また受講したいと思います。
◆顎関節症のお話しで舌癖が関連していることに興味を持ちました。稲葉先生のお話しは奥が深く勉強になります。
また、稲葉先生いわく、
「顎関節症の話しは一日では無理だ!」
是非、このような研修会を再度開催して頂きたいです。少しでも知識を身につけたいと思います。
◆今日はありがとうございました。未熟者で聞き入れることしかできませんが、勉強になることが多かったです。
これから勉強したいのでよろしくお願いいたします。
◆難しいお話しだったけれど、大学の授業では聞くことができないことを聴くことができて、とても有意義でした。
世間では、治らないと言われている顎関節症も治すことができるということがわかって自分でも治せるようになりたいな、と思いました。
今日参加させていただいてよかったと思いました。楽しかったです。ありがとうございました。感謝しています。
◆何回かお話しを聞かせていただいていますが、いつも新しい発見があります。まだまだ顎関節症の患者さんがいらしても今顎関節の状態がどうなっているのかが想像できないことが多く、治療も自信がありませんが、なんとなく最近全体像がみえてきたような気もします。咬合調整の仕方やスプリントの製作法や調整法などまだまだ勉強しなければならないことが多いのですが、本日はシュルテの分類と家庭療法については、しっかり理解したと思います。
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私自身、何度も顎関節症の講義を聞いていたはずなのに、改めて気づいたことがあまりにも多くてびっくりしました。
先生方の感想にもあるように今回のセミナー、一日では足りないほどのボリュームでした。
この次は顎関節症のライブ実習コースが開催されます。
ぜひ、こちらの方もお申込みお待ちしております。
IPSGのサイトからお申込み受け付けております。
先生方一日ありがとうございました。