1978年、当時西ドイツのチュービンゲン大学歯学部補綴学講座ケルバー教授のもとに留学していた頃、イボクラール社のナソマート咬合器の研修会を受講しました。
そこで、同社の補綴部長をしていたDr.shleichによる総義歯の研修会に参加するチャンスを得て、初めてイボトレーを用いたアルギン酸印象材で行った上下顎同時印象によるスタディーモデルを見ました。
さらにその模型をコーディネータという水準器のような精密な器械を用いて正確に模型をマウントし、最終印象のためのゴシックアーチ描記装置を組み込み、精密印象を行うというテクニックでした。
人工歯排列、イボカップによる重合など見るものすべてが目新しく、日本では行われていない精密なテクニックでした。
しかし、このテクニックを用いてもデンチャースペースの印象は完璧ではなく、その後に稲葉繁が考案した最終印象を上下顎同時印象するシステムのきっかけになりました。
写真は平成5年に稲葉繁が代表を務めるIPSG包括歯科医療研究会発足の際、デモを行っていただいたDr.shleichとの記念に残る1枚です。
今でも家族同士の付き合いは続いています。
Dr.shleichが引退する際、彼の資料をすべて託されました。 膨大なスライドです。Dr.shleichの素晴らしい技術をさらに改良したのが、現在の「上下顎同時印象法による総義歯」です。
Dr.shleichがスタディーモデルまで、上下同時に印象をとっていたのに対し、稲葉繁は最終印象まで「上下顎同時印象」に改良したのです。
それをDr.shleichに説明したところ、素晴らしい、と喜んでおられました。 そしてこの技術を日本中、世界中に広めてほしいと強く希望されました。
稲葉繁先生の自宅、ホームパーティーにケルバー教授とシュライヒ先生を招いた、これも貴重な1枚です。