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総義歯における下顎位の臨床的決定法〜顎咬合学会学術大会〜
こんにちは。IPSG事務局、稲葉由里子です。
6月27.28日『第33回日本顎咬合学会学術大会』が開催されましたので、ご報告させていただきたいと思います。
3名の著名な先生方によるシンポジウム形式で開催されました。
テーマは 『総義歯における下顎位の臨床的決定法』会場には沢山の先生方がお集りいただき、立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。
稲葉先生の講演に関して、パワーポイントや資料のお手伝いをしてくださった、IPSG副会長岩田光司先生がいつも側にいてくださったので、安心してこの日を迎えることができました。
岩田先生、いつも本当にありがとうございます。
顎間関係を決定する方法として、
咬合高径を決定する方法。
水平的位置を決定する方法。
など、様々な方法がありますが、稲葉先生は計測法を用いています。
計測法、ウィリス法の中でも、稲葉先生はレオナルド・ダビンチの比例法を用いています。
ダビンチは、人間が美しく見える基準について法則化し、素晴らしい絵画を描いています。
レオナルド・ダビンチの比例法を応用し、患者様が一番美しく見える総義歯を製作します。
内眼角から口裂の距離は
鼻下点からオトガイ下点
鼻下点から鼻根点
鼻根点から顔面と頭蓋の境
瞳孔間距離
耳介の長さ
眉上隆起の端から耳孔端
までの距離と等しい。
という法則です。
人工歯の排列に先立ち模型分析を行います。
まず模型を上から観察し、正中線を描きます。
前方では切歯乳頭を丸く囲い、その中心を決定します。
そこから矢状正中縫合を通り口蓋小窩の中点を通る線を引きます。
ここが左右の基準線となり排列します。
さらに切歯乳頭を通り矢状正中線に直角に線を引きます。
この線の延長上に犬歯が来ますから、この線をCPCライン、 即ちCanine-Papila-Canineと呼んでいます。
これは後に犬歯を排列するときの指標になります。
前歯の排列は石膏コアーを唇側にあてがい中切歯を排列します。
矢状正中縫合を正中線とし、切端の長さは唇側コアーから2~3mm見えるところに歯槽堤の形態とは関係なく位置付けます。
天然歯の切端の位置は平均して切歯乳頭の中央から7mmの所に中切歯の切端が来ます。
中切歯が決まりましたら、側切歯を排列します。
側切歯の切端は中切歯の切端から約1mm短くします。
さらに唇側はやや内側に入ります。
その後犬歯を排列しますが、これも唇コアを使用し排列します。
犬歯の位置は第一口蓋趨壁の端から2mmの所に犬歯の基底結節が位置し、 そこから7mmの所に来ますがこの時C-C-Pラインの延長上に犬歯の切端が来るように排列します。
このようにすべて計測や法則に基づいています。
このように、稲葉先生の総義歯はチュービンゲン大学、シュトラック教授のシュトラックデンチャーを原型としています。
稲葉先生が開発した上下同時印象法は、噛めるところ、即ち中心位での印象が採れる唯一の方法です。
咬合採得、中心位記録、フェイスボートランスファー、ゴシックアーチを1度で行う事により、 一連の作業を簡易化することができると同時に、患者様の情報を、 咬合器に確実にトランスファーすることが可能になります。
フェイスボートランスファーを使用することで、矢状正中とカンペル平面を読み取ることができます。
そして、シュトラックデンチャーの歯肉形成、よくご覧頂きたいと思います。
バッカルシェルフの厚み、そしてサブリンガルルームの大きさが特徴です。
上下顎同時印象法の様子もすべて動画でご覧頂きました。
こちらが、ガンタイプのシリコン印象材で上下顎同時印象した印象です。
患者様の口腔内をすべてまるごとコピーできる画期的な手法です。
日本の多くの大学で行われている総義歯はヨーロッパのギージーの流れを汲むものです。
ギージーによるシンプレックス咬合器に与える顆路傾斜は30度に設定し、 切歯路角は顆路も同様に30度に設定します。
したがって咬頭傾斜角も30度となり、フルバランスドオクルージョンが生まれます。
この時臼歯の排列はスピーの湾曲を作るように咬合平面を基準に排列します。
上下の歯槽堤の最も高いところを結んだ角度、いわゆる歯槽頂間線を基準に排列しますが、しばしば上顎の歯列が小さいときは歯槽頂を基準に排列する関係から正常に排列できない場合があります。
その角度は80度が基準で80度を超えると交叉咬合排列を行う必要があります。
いずれにしても歯槽頂を基準にした排列をするように指示されています。
その結果上顎の排列は歯列弓が舌側になり、頬の粘膜との間が空く結果となります。
そのため食物の停滞を招いてしまいます。
シュトラックデンチャーでは元歯が有った所に排列するのが原則であるため、 歯槽頂とは関係なく口腔周囲筋のバランスの良いところに排列するため、 頬側に食物の停滞を招くことを防ぐことが出来ます。
シュトラックデンチャーに使用する人工歯は咬頭傾斜25度のオルソシットを使用しますが、 咬合平面の傾斜などを考慮すると最終的な矢状顆路角は30度程度になります。
老人の下顎頭は平たんになっていることがほとんどであるため、 顆路を計測しそれを咬合器に与えても顆路が修復されることは望めないため、 平均的な顆路を与えて下顎頭のリモデリングを期待するのが良いと思います。
シュトラックデンチャーは義歯が下顎頭を誘導するというコンセプトですから、 しっかり上下顎ともに吸着する義歯を作ることが必要です。
これらの条件を満たす方法は上下顎同時印象によるデンチャースペースが再現できる私の方法が一番優れていると思います。
昨年の『総義歯ライブ実習コース』の模様を今回の学会で講演させていただきました。
(※患者様からセミナーや学会での発表の承諾をいただいております。)
患者様は、美しい口元と取り戻されました。
年齢も38歳と若く、今まで口元のコンプレックスで辛い思いを沢山されてきたと思います。
これからは、自信を取り戻し、第二の人生を歩まれるでしょう。
会場へ足を運んでくださった先生方、本当にありがとうございました。
2015年06月29日 | コメント (0) | トラックバック (0)
『総義歯ライブ実習コース』いよいよセットです!
当日の朝。
父である稲葉先生に、「大丈夫だった?」
と聞いてみると・・・
「大丈夫じゃなかった。」
という返事が(-_-)
いつも自信満々なのに、長い間この実習をやって来てこんな答えははじめてです。
「小平君にかかっている」
と稲葉先生。
前日夜の8時に試適が終わり、模型を託された小平先生。
徹夜で、排列と歯肉形成の修正をしてくださいました。
そして朝の8時にイボカップシステムの重合完成。
その足で、研修会場に駆けつけてくださいました。
研磨の模様です。
今回の実習コースは技工士の先生方も多く、小平先生の手元を注意深くご覧になっていらっしゃいました。
そして完成した義歯がこちらです!
患者様の口腔内とは違って、左右対称です。
さて・・・
どうだろう。
本当に心配です。
患者様にセット。
すると、驚く程口元が美しくなりました。
前日の試適で心配だった部位は、小平先生が修正してくださり、適合もばっちり。
先生方お一人お一人に実際に口の中を触って頂きました。
下顎は揺すっても外れない。
もちろん、上顎は患者様ご自身でも外すのが難しいとおっしゃっていただきました。
先生方遠慮して触ってるのかなと思い、私も恐る恐る触らせて頂いたところ、
よかった!!
いつもの吸着力、発揮できていて、吸い付くようです。
患者様の初心の口元です。
そして、横顔。
こちらが、新しい義歯を装着後の口元です。
目元を隠してあるのでわかりにくいかもしれませんが、別人のように美しくなりました。
横顔もとても綺麗です。
あれだけ大きく見える、シュトラックデンチャーは口の中に入ると驚く程自然です。
セットしてすぐに、お弁当を一緒に食べていただきました。
痛かったら噛む事ができませんし、飲み込むこともできません。
でも、患者様は前歯で軽く噛むだけでお新香もゴボウも召し上がっていらっしゃいました。
「お肉も食べられそうです。」
「今迄食べた後、下の入れ歯に食べ物が詰まったけれど、全然詰まらないです。本当にありがとうございました。」
とおっしゃっていただきました。
排列、歯肉形成のトラブルがありましたが、その後の小平先生のリカバリー、頭が下がりました。
本当に今回ほど、技工士の先生との連携の大切さを強く感じた事はありません。
そういう意味でも素晴らしい実習だったと思います。
また、稲葉先生の確実な印象と咬合採得がなかったら、 このような結果は出せなかったと感じます。
最後に、稲葉先生
「ゆりちゃん、よかった!!」
と喜んで、腕を掴まれました。
こんなに何度も涙ぐむ実習もいままでなかったと思います。
岩田光司副会長には、排列作業中、ご自身の症例を画面でシェアしてくださったり、全力でサポートしてくださいました。
最後のまとめの講義素晴らしかったです。
先生方からも沢山の感想をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
▼稲葉先生の仕事ぶりにあらためて感動しました。技術はもちろんのこと、あきらめない姿勢には本当に頭がさがりました。少しでも明日から臨床へいかしていけるようにがんばっていきます。有難うございました。
▼今日、試適後の調整を見ることができる貴重な経験をさせて頂きました。試適あとのエラーが発生しても例年通り素晴らしい結果をみさせて頂きまして、やはり教授はすごいなと改めて感じました。
▼総義歯の全体の流れ、特にラボではあまり見えない、フェイスボー、バイトや試適など貴重な経験ができました。気を抜けない講習会で最初から最後までペンが走っていたと思います。普通の総義歯は知っています。でもきちんとした総義歯の過程も含め初めて知りました。これからコツコツと知識を会得しまた来年参加できるように少しずつ前に進もうと思いました。これから自分自身やってみて一発目から完璧にはできないと思うので数々の疑問が出るか楽しみです。
▼患者さんが義歯をセットして痛みもなく食事もとれていた姿を見て感動しました。小平さんみたいに稲葉先生のような素晴らしい先生とパートナーを組んで患者さんが満足する義歯を作れるようような技工士になれるように勉強したいと思いました。今後できるだけ稲葉先生のセミナーを受講していきたいです。今日はどうもありがとうございました。
▼私の目標である臨床の集大成である講習を新人にも理解してもらいたく参加しました。日頃私の言っている材料操作等、基本の重要性と口腔内、顎関節の重要性を理解してもらえたようです。土曜日の勉強会にやるき満々です。私は休みがなくなりそうです。
▼3日間内容が濃くて覚える知識が膨大でした。特に稲葉先生の排列の仕方とリカバリーの方法が見れてとても参考になりました。これから自分の診療所で実践にうつるわけですが、今回が入門編とするならばアドバンスコースがあればうれしいなと思いました。
▼TF時にはどうなるかと思いましたが、セット時には完璧でした。さすがです。この義歯製作法のすごさを実感しました。ぜひ自分でもシュトラックデンチャーをつくってみたいです。
▼すべての作業手順が考えぬかれており感動しました。真似していきたいと思います。
▼オリジナルとイボクラーデンチャーシステムのビデオを見て、更に改良を加え、IPSGの究極の総義歯システムに到達した流れが非常によく解りました。今回は顎堤の高さが左右ことなり、アーチもゆがんだ目の錯覚をおこしやすいマウントの難しいケースでしたが、フェィスボウで正中をとり、模型の基底面をカンペル平面にそろえることで感覚に左右されず咬合器に装着する大切さがよく解りました。
▼稲葉教授の講義は何回聞いても新しく学ぶことがあるところがすごいと思いました。
▼3日間で全ての治療過程を勉強することができました。有難うございます。実際の患者さんで結果をみることができ、感動しました。
▼今回もダイナミックな講演を有難うございました。新人もすでにやるき満々です。材料操作、医療技術、技工技術の融合は圧巻でした。
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
IPSG研修ルームで初の開催、総義歯ライブ実習コース。
最後まであきらめない稲葉先生とそれをサポートする幹部の皆様、そしてとても真剣に受講してくださった先生方、そして患者様のご協力のおかげで無事、成功に終わりました。
魔法のように鮮やかにうまく実習よりも 会場の先生方には、より多く学ぶところが多かった ライブだったと思います。
3日間、本当にありがとうございました!
2014年07月23日 | コメント (0) | トラックバック (0)
2014『総義歯ライブ3日間実習コース』2日目♪
今日はいよいよ『上下顎同時印象』です!
2日目は9時からの開催となりましたが、はやくから先生方にお集りいただき、テキストをご覧になったり、稲葉先生に質問されたり、熱心さが伝わってきました。
前日に準備しておいた、上下顎同時印象用のトレーを試適。
最初にゴシックアーチの描記を行いました。
■ゴシックアーチ
稲葉式は歯列上の3点法にて描記を行います。
セントラルクラッチの場合、描記芯と描記盤が口腔内中央に位置するため、舌を後退させなければゴシックアーチを描記することが出来ず、自ずと下顎後退位にて、描記されます。
舌後退位により、最大2mm程度下顎位は後退すると言われています。
シュライヒ先生はゴシックアーチのアペックス上ではなく、描記された前方運動上のアペックスから2mm前方に中心位を定めていました。
舌後退位も必ずしもまっすぐ後方に下がっているわけではなく、右より左よりなどに下げる人もいます。 それにより、左右どちらかに偏移した偏心位になる可能性がとても大きいです。
稲葉先生が歯列上でゴシックアーチを描くのは、アペックスを舌に阻害されることなく、再現することが可能です。
すべてチェック後、いよいよ『上下顎同時印象』です!
印象材の量がポイントだと説明があり、出来る限り患者様が苦しくないように、10分の間冷静に鼻で息をしていただけるように経験上のポイントをいくつかご説明させていただきました。
私もそうですが、焦ってしまうと、印象材を多くつぎ込んでしまったり、どちらからトレーを印象したら良いのか、そして大事な嚥下をさせてしまうのを忘れてしまうことがあります。
印象材を注ぎ込んだ後、患者様の喉を触る事を忘れないでください。
ポイントです。
嚥下をしていただくことで、中心位の印象を採る事ができます。
上下同時印象は、噛めるところ、即ち中心位での印象が採れる唯一の方法です。
咬合採得、中心位記録、フェイスボートランスファー、ゴシックアーチを1度で行う事により、 一連の作業を簡易化することができると同時に、患者様の情報を、咬合器に確実にトランスファーすることが可能になります。
フェイスボートランスファーを使用することで、矢状正中とカンペル平面を読み取ることができます。このように一塊ですべての情報をコピーすることができます。
印象材の量も適切です。
今回、技工を担当してくださったのは、小平デンタルラボの小平雅彦先生です。
小平先生は、故岡部宏昭先生の弟子でもあり、IPSGのVIP会員でもあります。
岡部先生亡き後、シュトラックデンチャーを継承してくれる技工士として、期待が高まります。
これで、患者様の口の中の状態をすべてトランスファーできました。
石膏コアを製作後、いよいよ排列です。
稲葉先生自身がすべて排列をし、先生方にご覧頂きました。
人工歯はシュトラックがデザインした、オルソシットを使用します。
この人工歯は25度の角度が与えてあります。
咬合様式は、フルバランスドオクルージョンです♪
実は排列から、患者様の試適まで、1時間半。
時間がないところで、稲葉先生排列をさせていただきました。
実際に患者様に指摘させていただいたところ、咬合高径がなぜか上がってしまったり、歯肉形成がうまくいかなかったりとエラーが発生。
夜の8時迄、稲葉先生あきらめずに再排列。
先生方にも患者様にもずっとお付き合いいただきました。
試適、そして重合まで2日目で終わらせる必要があります。
だいたいのところまで、決めて、あとは技工士の小平先生に託しました。
シュトラックデンチャーの歯肉形成、よくご覧頂きたいと思います。
バッカルシェルフの厚み、そしてサブリンガルルームの大きさが特徴です。
現在のBPSの外形に比べて、大きく違う点だと思います。
2日目修了。
明日はいよいよセットです!
2014年07月22日 | コメント (0) | トラックバック (0)
2014『総義歯ライブ3日間実習コース』1日目♪
IPSG事務局、稲葉由里子です。
7月19.20.21日『総義歯ライブ実習コース』が開催されたので、ご報告させていただきます♪
実際の患者様をお呼びして、問診からスタディーモデルの印象、上下顎同時印象、 咬合採得、ゴシックアーチ、排列、重合、最後のセットまですべてライブでご覧いただけるセミナーです。
3日間3回に分けてお伝えしたいと思います(^_^)
稲葉先生の右腕として技工インストラクターをつとめてきた、故岡部宏昭先生。
Dr.Hans Shleichの総義歯コースでも活躍されていた、素晴らしい先生でしたが、大変残念ながら、昨年末お亡くなりになりました。
岡部先生がいない、総義歯コース。
今回のメインサポートであり、一部講義も担当するのは、IPSG副会長、岩田光司先生、アシスタントとして、佐藤孝仁先生、技工アシスタントとして、小平雅彦先生、中沢勇太君、映像担当は稲葉則子ということで、IPSGスタッフ力合せての総義歯セミナーとなりました。
義歯を吸着させるだけではなく、咬合をどのように与えるかが、ポイントです。
今回ご協力いただいた患者様は、38歳女性。
1年前に稲葉歯科医院に来院されたのですが、残念ながら重度歯周病のため総義歯となりました。
患者様のスタディーモデル採得の様子です。
スタディーモデル用のトレーはAccu-tray、Ivoclar-Vivadent社から販売しています。
総義歯に必要な部位をこのトレーを用いる事で的確に採得することができます♪
模型分析の様子です。
IPSGセミナールームの特徴として、口腔内や稲葉先生の手元がこんな風に拡大してご覧頂けるため、先生方に詳細に学んで頂く事ができます(^_^)
上顎のスタディーモデルです。
歯周病を煩っていたので、左右骨の吸収が非対称、第一横口蓋数壁が消えています。
(故岡部宏昭先生資料より)
【CPCライン】
Canine(犬歯) Papilla(切歯乳頭) Canine(犬歯)を結ぶ線は総義歯の排列の基準になります。
切歯乳頭の中点から7ミリ外側(唇側)に中切歯唇面。
第一横口蓋数壁の末端からCPCラインに向かい9ミリ外側に犬歯の最大豊隆部。
CPCライン上に犬歯尖頭。
第一横口蓋数壁末端から2ミリ外側に犬歯の舌側の歯頸部です!
下顎は歯槽頂が尖っていて、舌側にアンダーカットがあります。
(故岡部宏昭先生資料より)
下顎の犬歯の近心隅角とレトロモラーパッドの舌側面を結んだライン。
そして、大切なのは顎舌骨筋の付着の仕方を頭の中に入れておく事です。
この部分は、シュトラックデンチャーでは使いません。
スタディーモデルを元に作った上下顎同時印象用トレーです。
気になる咬合採得は・・・
(故岡部宏昭先生資料より)
上唇小帯最深部から上顎切歯切端まで22ミリ。
下唇小帯最深部から下顎切歯切端まで18ミリ。
を基準に38ミリから40ミリに合わせればだいたい決まります。
口腔内でも同じ状態が再現できています。
ほとんど、咬合高径はこれで予測できました♪
これで、2日目の午前中、上下顎同時印象をするための準備が整いました(^_^)
ここで、稲葉先生の総義歯、シュトラックデンチャーのコンセプトをお伝え致します。
今までの日本の総義歯は、顆路傾斜を計って、ベネット角を再現してフルバランスを作る方法でした。
患者様の顆路を計り、チェックバイトで咬合器を調整していた従来の方法です。
しかし、老人の顆路は丸みを帯びていて平らな形に変形してしまっています。
従来の方法は、この平らな顆頭に合せて計測するため、平らな咬頭の義歯になってしまうということです。
シュトラックデンチャーは、オルソシット人工歯の咬頭傾斜は25度と決まっています。
従って、義歯が顆路を誘導するというコンセプトです。
義歯が顆路を誘導するには、適合性が相当良くて義歯が動かない様な物を作らないといけません。
顆路は、リモデリングされます。
関節と窩、円板を介在させてわずかに離れる程度の誘導です。
そこが、従来の方法とシュトラックデンチャーとの大きな違いと言ってもいいでしょう。
一日目が修了。
今回開始直後にカメラとモニターの配線がうまくいかない事態が発生。
わたしがほうぼう近所の電気屋さんに涙目で聞き歩いたけれど見つからないということがありました。
結局、技工士の中沢君が粘り強さで、配線を正しくつけかえ、復活した事件もありました。
ご参加いただいた先生方、ご迷惑おかけいたしましたm(_ _)m
懇親会の模様です!!
2日目、3日目もよろしくお願いします(^_<)-☆
2014年07月22日 | コメント (0) | トラックバック (0)
『総義歯ライブ実習コース』3日目
IPSG事務局、稲葉由里子です。
最終日、いよいよ患者様へのセットです
完成した総義歯はこちら♪
イボカップシステムにより、口蓋は薄くても強度を保っています。
サブリンガルルームの形は、シュトラックデンチャー独特の形です(^_<)-☆
試適の段階で、吸着していたので、安心してセットを迎えました。
装着してすぐの写真です(^_^)
鏡でもご覧いただき、
「とってもいい感じ。綺麗に作っていただきありがとうございました。」
とおっしゃっていただきました。
見てください。
笑顔もこんなに素敵です☆
歯の見え方、スマイルラインもバッチリです♪
そして、先生方お一人お一人に口の中を触っていただきました。
高瀬先生、あまりの吸着に驚いてくださいました☆
全員に確かめていただきましたが、先生方とてもびっくりされていました。
実際私も触らせていただきましたが、口を開けた方が吸着力が増し安定します。
何よりも患者様自身が大変喜んでくださいました。
セットしてからすぐ、先生方と一緒に食事を召し上がっていただきました。
こんな大胆なセミナーは他にはないと思います。
痛かったら噛めません。
一口目の食事を口に入れた時。
「下の前歯で軽く噛めます!」
というのが第一声でした。
食べにくそうな物を選んで薦める稲葉先生。
でも、しっかり噛み切っていました。
お弁当の中にミョウガの漬け物が入っていたのですが、前歯でしっかり噛みちぎっていました♪
びっくりしたのは、あまりにも自然だったことです。
噛める事を確かめたあとは、先生方と楽しくお話が弾んでいました。
最後に、
「こんな素晴らしい歯を作っていただき、本当にありがとうございました。孫が一番最初に気づいてくれると思います。」
とうれしそうにおっしゃっていただき、セミナーに参加してくださった先生方みんなが、うれしい気持ちになりました!
先生方から、感想をいただいたので、一部ご紹介させていただきます。
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▼とにかくすごいセミナーでした。言葉にするのは難しすぎるのですがあらゆる義歯のセミナーの中で圧倒的にレベルが高いと思います。そんなにレベルの高いものを本当に簡単にできるようにまとめられているのですごさがうまく表現できないですね。稲葉先生が実際に患者さんの治療をされている時にもすごすぎてリアクションが出せないんですね。他の先生もリアクションを出そうとすると取ってつけたようになってしまうのだと思います。早く1症例やってみたいです。
▼ 稲葉先生の究極のテクニックをまじかに見れてとても感激しました。今までのわたしの総義歯はとんでもないものでした。患者さんごめんなさい。ぜひ自分でもできるようになりたいです。稲葉先生もすごかったですが、岡部先生もすごかったです。
▼稲葉先生が「簡単にできる」と言われることがなかなかやってみて難しいことが多いです。一人でやっていると壁にぶつかった時にすぐ疑問が解けずそのままになってしまって結局先に進めない状況になることがあります。そんな時に問題解決の仕方があればいいのですが・・・
▼前回の総義歯セミナーに出て考え方が変わり、実習セミナーにでようと思いました。今回受講してみてこのシステムを考えられた稲葉先生の素晴らしさと岡部先生の技術の知識に感激しました。次は岡部先生のセミナーを受講して自分でシュトラックデンチャーを製作しようと思います。有難うございました。
▼3日間本当にお世話になりました。来年もこの3日間のコースに参加させて頂きたいです。
▼いつもありがとうございます。私の小さな悩みに対し、詳しく述べて頂き、大変わかりやすかったです。
▼大変勉強になりました。有難うございました。大学病院の教育方針を変えるのは難しいと思いますが上下同時印象の素晴らしさを私自身が習得することで少しでも若い先生方も総義歯治療に興味をもってくれたらいいなと思います。
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ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございましたm(_ _)m
2013年07月16日 | コメント (0) | トラックバック (0)
『総義歯ライブ実習コース』2日目
IPSG事務局、稲葉由里子です。
今日は『総義歯ライブ実習コース』の2日目、いよいよ上下顎同時印象です☆♪
精密印象法トレーの製作、そして患者様への試適を行います。
こちらが、上下顎同時印象用トレーです。
ゴシックアーチ、フェイスボートランスファー、咬合採得を同時を行うための大事な行程です。
中心位の記録とゴシックアーチを描くためのピンの植立です。
こちらが実際に描いたゴシックアーチ。
3点で咬合面上で描きます。
そして、いよいよ、上下顎同時印象です!
印象材の量まで、詳しく解説しながら印象を採りました。
フェイスボートランスファーです。
そして、記録した印象がこちらです!
ポイントは頬筋の印象。
印象時、患者様に「イ〜」「ウ〜」と発音をしていただき、患者様ご自身の筋肉を使っていただきます。
そして、大事なポイントが嚥下です。
嚥下をするとニュートラルな位置、中心位に戻ります。
嚥下をしないと、舌の位置が後ろに下がり、後退位で記録されてしまう原因ともなるので、忘れずに行ってくださいね(^_<)-☆
そして、排列です☆
すごい、はやいはやい。
印象を注いで、模型作りから、排列まで先生方に説明をしながら2時間!
排列の時間はなんと1時間です(^_^;
仕事も綺麗で素晴らしいです。
そして患者様の試適です。
患者様の表情、そして先生方の表情をご覧いただいてもわかるように、完璧でした。
ここで、拍手が起きたのも、長くこのセミナーを開催して初めてだったかもしれません。
ワックスの状態で、これだけの吸着がでたことに先生方びっくりされていました(^_^)
代表で、目黒先生にも触っていただきました。
「すごいです!」
という声に、先生方から笑いが起こり、稲葉先生も岡部先生も自信満々です。
ということで、これからイボカップで重合、仕上げ、完成です!
明日のお昼は患者様に装着、そして一緒に食事をする予定です(^_<)-☆
2013年07月14日 | コメント (0) | トラックバック (0)
『総義歯ライブ実習コース』1日目
IPSG事務局、稲葉由里子です。
7月13.14.15日『総義歯ライブ実習コース』が開催されたので、ご報告させていただきます。
実際の患者様をお呼びして、問診からスタディーモデルの印象、上下顎同時印象、 咬合採得、ゴシックアーチ、排列、重合、最後のセットまですべてライブでご覧いただけるセミナーです。
毎回違う患者様にご協力いただき、ライブでご覧いただくコースはIPSG以外ありません。
やはり、総義歯の製作はドクター、テクニシャンが協力して初めて患者様に提供できるものです。
今回、沢山のテクニシャンの方にご参加いただきました☆
今回も、稲葉先生の右腕としてタッグを組むのは、Dr.Hans Shleichの総義歯コースのインストラクターをつとめ、 阿部晴彦先生の元技工インストラクターをつとめてきた、岡部宏昭先生です。
一日目は講義、そして患者様のスタディーモデルの印象です。
顎底は極度に吸収しています。
歯槽底はなく、真っ平ら。
普通に言われる、難症例ですね。
上顎の模型です。
レトロモラーパッドまで、急傾斜です。
レトロモラーパッドは唯一、下顎で変化のない部位です。
ここを抑えておかないと、義歯が沈下してしまいます。
SIバイトトレーで、咬合採得を行う事で、上下顎同時印象法の精度が増しました。
SIバイトトレーとは、スタディーモデルを中心位でトランスファーするためのトレーです。
上下顎同時印象を実行する場合に重要な事は、個人トレーとゴシックアーチの描記に使用する装置を製作しなければなりません。
今までは、スタディーモデルを咬合器にトランスファーする際、平均値で製作していたので多少の誤差を生じることがありました。
その誤差を精密印象時に修正していましたが、SIバイトトレーを用いると、より精度が増し、最終印象まで、スムーズに進むことができます☆
少数歯欠損、レジリエンツテレスコープにも応用でき、とても臨床幅が広いトレーです。
2日目の上下顎同時印象を完璧なものにするため、集中して作業をすすめました。
セミナーの後の懇親会の模様です(^_<)-☆
場所はセミナーが開かれた、稲葉歯科医院の近く『ビストログラッソ』です。
お料理も素敵でした♪
勉強のあとのお食事、お酒は美味しいですね☆
今回のセミナー、技工士の先生も沢山ご参加いただきました。
やはり、総義歯はお互いの協力があって完成し、患者様に提供できます。
わたしの両隣、テクニシャンの松浦先生と、小平先生。
そして手前に座ってらっしゃるのが、今回技工インストラクターを努めてくださっている岡部先生です。
今日改めて知った知識が沢山あり、とっても勉強になりました♪
明日はいよいよ、上下顎同時印象です!
頑張りましょう(^_<)-☆
2013年07月14日 | コメント (0) | トラックバック (0)
義歯の発音に関与する部位
IPSG事務局、稲葉由里子です。
先日開催された、『総義歯の基礎と臨床』の中で、義歯の発音に関する部位をご説明させていただきました。
ご参加いただいた先生方からのご要望により、パワーポイントをご紹介させていただくことになりました☆♪
義歯の口蓋部にワセリンを塗り、アルジネートなどの粉をふりかけ、実際に患者様に発音をしていただき、調べたものです。
患者様が発音しずらい言葉を聞いて、その部位を薄く削ってあげる、または、足してあげるなどをして差し上げてください。
タ行はわずかに舌が口蓋に当たる発音です。
ぜひ、参考にしてみてくださいね☆
岩田先生のセミナーはこのような有益な情報が沢山あります。
こちらも合わせてぜひ、よろしくお願いいたしますm(_ _)m
▼セミナーの詳細はこちらから
http://www.ipsg.ne.jp/iwatatelescopepr/
▼セミナー参加のお申込みはこちらから
http://www.ipsg.ne.jp/seminar-apply/
2013年07月11日 | コメント (0) | トラックバック (0)
顎咬合学会 KaVo主催ランチョンセミナー
先日開催された、『顎咬合学会学術大会』KaVo主催のランチョンセミナーで稲葉先生が講演をさせていただいたので、ご報告させていただきます☆♪
『カボシステムによる上下顎同時印象法による究極の総義歯』
稲葉先生が開発した総義歯システムについて、動画を用いて講演させていただいたので、まるで、患者様の治療を実際に見ているようでした(^_^)
今回のランチョンセミナーは東京国際フォーラムのB7という会場で、600名座る事ができる一番大きな会場です。
400名分のお弁当のチケットもすぐに売り切れて、大盛況でした!
ひとつ、2000円のお弁当だそうです〜
こんな大きな画面で素晴らしい会場でした。
なかなか素敵です。
後ろからも写してみました。
上下顎同時印象法の製作手順を説明中です。
動画も沢山大画面でご覧いただきました☆♪
そして上下顎同時印象法についてもすべて動画でご覧いただきました。
印象材の量がポイントですね☆
稲葉先生の総義歯は、KaVoのプロター7咬合器を使ったシステムです。
配列、そして試適です。
重合はイボカップシステム。
この重合方法を越える精度のものは未だにないと言ってもいいでしょう。
そして完成です!!
ご来場いただいた先生方、本当にありがとうございました。
KaVoのブースの様子です。
ブルーのユニフォームがとっても鮮やかで素敵でした☆
宣伝もばっちり(^_^)
KaVoのユニットの前で・・・
左から、IPSG名誉会長、大石尭史先生、稲葉先生、則子夫人、私、田嶋健先生、慶子夫人です☆♪
前日に『上下顎同時印象法による総義歯』のテーブルクリニックも開催されたのですが、本当に沢山の先生方にいらしていただきました。開始30分前にすべての椅子が埋まり、一時間以上の講演をずっと立ちながら熱心に聞いてくださっている先生方を見て感激しました。
テーブルクリニック終了後も、熱心に質問をしてくださっている先生方。
やはり、総義歯が見直されていること、その必要性を実感します。
IPSG技工インストラクターの岡部さんにも、一生懸命対応してくださいました。
今回、感じたのは若いドクターやテクニシャンの方々が非常に総義歯に興味を持ってくださっている事。
稲葉先生に直接、いくつもの質問をされている様子も新鮮でした。
これから若い先生方にどんどん覚えていただきたいと思います☆♪
やはり、こんなに素晴らしい総義歯のシステムは他にはないと思うので、どうにかして広めていきたいです。
ご来場いただいた先生方、そして全力でサポートしてくださったIPSGスタッフの皆様、KaVoの方々本当にありがとうございました!!
2013年07月03日 | コメント (0) | トラックバック (0)
2013『総義歯の基礎と臨床』開催されました【後半】
前半に引き続き、後半をお届けいたします(^_^)
今回、発売された「ライブで見せる究極の総義歯Ⅱ」の動画をご紹介させていただきながら製作の流れをお伝えさせていただきました。
上下顎同時印象法による総義歯の利点は、咬合採得、ゴシックアーチ描記、フェイスボートランスファー、上下顎印象がわずか1回で行う事ができるため、合理的であると同時に来院回数を減少することが可能になることです。
そして、咬合採得した位置で印象採得を行うため、理想的なバランスを採る事ができます。
印象中に嚥下が可能なのは、このシステムでしかできません。
印象を採っている状態でフェイスボートランスファーを行うので、誤差も生じません。
人工卯は頬舌的に筋圧のバランスのとれたところに配列できるため頬筋のサポートを得る事ができます。
サブリンガルルームを利用することで、顎舌骨筋窩まで延長する必要がないので発音、嚥下が行いやすい 事も大きな特徴です。
顎舌骨筋窩は使わない理由は、舌の機能が失われる事、また発音ができないことが挙げられます。
フェースボーは体のアライメントを咬合器にトランスファーするものです。
咬合器に対して3次元的なものを決めてあげないといけません。
こちらは、アキュートレー(Ivoclar社で販売しています)で採ったスタディーモデルです。
サブリンガルルームを意識的に印象できる優れたトレーです☆
そして、SIバイトトレー。
SIバイトトレーの開発により、咬合採得の作業が本当に楽にそして綺麗になりました。
総義歯以外の少数歯欠損症例にも応用できるので、ぜひ使っていただきたいと思います。
こちらが、上下顎同時印象を行うための個人トレーです。
上唇小帯と下唇小帯の一番低いところ、日本人で40ミリ、小さいお顔の方で38ミリに合わせればだいたい決まります。
真ん中のネジはフェイスボートランスファーをするためのものです。
こちらは咬合面上でのゴシックアーチ描記です。
真ん中だと、舌がじゃまになってしまうため、咬合面で記録しています。
患者様にSIトレーを試適し、印象をとる前にゴシックアーチの描記をします。
ゴシックアーチの後、いよいよ、上下顎同時印象です。ガンタイプのシリコン印象材を注入し、口腔内すべての情報をとります。
このシステムは、嚥下をすることができます。
嚥下により、患者様が食事をして飲み込む状態の印象がとれるということです。
フェイスボートランスファーです。
咬合器に再現したところです。
後ろからみて翼突口蓋縫線がつながっているのかを確認するだけでも顎位の確認になります。
ハーミュラーノッチの印象は辺縁封鎖するため、絶対にとらなければいけないポイントです。
上下顎同時印象による、模型です。
沢山の情報がこの中にぎっしり入っています。
旧義歯と比較しても、こんなに大きさが違うのがわかります。
旧義歯の状態では、まったく辺縁封鎖がとれていません。 左右のバランスが違うのも一目瞭然です。
このピッチングテスト・・・
前半にお伝えさせていただいた、ギージーの動画とそっくりですね(^_^)
そして、患者様と一緒に、装着直後にお食事です。
前歯で患者様がこんにゃくや、お肉を噛み切れるかどうか、みんなで見る・・・
なんていう実習は他には絶対ないと思います。
もちろん、患者様はお弁当、完食されていました(^_^)
さらにこのシステムを応用し、オーラルディスキネジアや、脳卒中後の麻痺のある患者さんに対してよい成績を上げています、顎関節症を伴う総義歯患者においてもよい成績をあげています。
最後に先生方の質問にも詳しくお答えさせていただきました☆
今回初参加の小西浩介先生です。
そして、技工士の松浦秀亮先生。
稲葉先生の総義歯システムに感激したとおっしゃっていただきました。
セミナー終了後の懇親会も開催されました。
セミナー終了後、かなりリラックスしている状態です。
来月、7月13.14.15日はいよいよ『総義歯ライブ実習コース』が開催されます。
▼『総義歯ライブ実習コース』の詳細はこちらです!!
▼IPSGのセミナーの一日を追った1dayレポートはこちら
(IPSGのセミナーの雰囲気がわかるかと思います☆)
2013年06月24日 | コメント (0) | トラックバック (0)
2013『総義歯の基礎と臨床』開催されました【前半】
こんにちは。
IPSG事務局、稲葉由里子です。
6月23日『総義歯の基礎と臨床』セミナーが開催されたのでご報告させていただきます。
今回も全国から先生方にお集りいただきました。
ほとんどが、稲葉先生の総義歯のセミナーを初めて受講される先生方で、色々な視点から学んでいただけたと思います☆
内容盛りだくさんだったので、前半、後半の2回にわけてお伝えいたします(^_^)
私たちは、総義歯の患者様をいかに少なくするか、ご自分の歯で噛んでいただけるように、できるだけ総義歯になるのを食い止めなければいけないということを常に意識しなければいけません。
総義歯とは、今までの歯科医療の敗北だということをわかっていただきたいと思います。
歯が無くなるという事は、保存ができなかったということです。
最近、介護食の宣伝は、舌でつぶせる。歯肉で噛める。
というものばかりです。
介護食でこのような宣伝がある限り、歯科医療の敗北としか言えないと思います。
残念ながら、歯をすべて失ってしまった方は大勢いらっしゃいます。
歯を失ってしまった方に、保険の義歯は問題外です。
安い義歯を作らされるしわ寄せは、ラボにいっています。
日本の保険制度の一番良いところは、自費診療ができること。
保険の義歯は限界があります。
最善の知識と技術を提供できる技術を今回先生方に身につけていただきたいと思います。
日本の総義歯の技術は実は非常に古く、1583年に作られています。
当時としては長寿の74歳で往生した紀伊・和歌山の願成寺の草創者・仏姫の拓殖の木から作った木床義歯です。
当時は現在のように優れた印象材や模型材もなく、咬合器もない時代に、適合性に優れ、噛める義歯を作ることができたものであると、感心してしまいます。
当時の義歯の製作方法を調べてみると、非常に合理的であり、仏教芸術の伝統を受け継いでいることがうかがえます。
その製作法の鍵は、蜜蠟を使った印象採得と咬合採得を同時に行うことです。
これは蜜蠟を鍋で温め、それを一塊として患者さんの口腔内に入れ、咬合位を決定した後に口腔内の形を採得するというものです。
一塊にしたものを上下顎に分けたのであるから、正確な咬合位の再現が化のになるのは当然です。
稲葉先生は日本の歴史から総義歯を学び、上下顎同時印象ができる方法がないかずっと模索していました。
そしてガンタイプの印象材が開発されたのを機に、最終印象を上下顎同時印象をする方法を開発します。
BPSではスタディーモデルを上下同時に印象をしていますが、最終印象ではありません。
稲葉先生の総義歯は、世界最古の木床義歯による上下同時印象、そして化石の原理が原点です。
化石は一つのものを二つに割っても、必ずもとに戻ります。
一個の石をふたつに分けると魚の化石とプリントされた陰型が現れますが、重ねると必ずひとつに戻ります。
総義歯も一緒でひとつの印象を咬合器上で、ふたつに分け、最後に戻すという考えです。
これまでの総義歯はギージーによる歯槽頂間線法則が基本となっていました。
ですが、歯槽頂間線法則では上顎の頬側のサポートができません。
上下顎同時印象をすると、デンチャースペースが再現できるので、頬側のサポートが可能となります。
従来の総義歯のウィークポイントについて
- 患者自身の筋圧で印象不可能
- 平均した圧力で印象できない
- 機能時の口腔周囲筋の印象が不可能(フレンジテクニックはかなりラフです)
- 嚥下ができない
- 上下別々に印象を採得するため誤差を生じる(翼突口蓋法線が伸びてしまいます。義歯の脱落の主なものは粘膜面にエアーが入ってくることで、上顎は口蓋からはずれます。上顎の口蓋は封鎖がむずかしいからポストダムをつけ、下顎は臼後三角までしっかり伸ばします)
- 来院回数が多くなる
上下顎同時印象法を行って、総義歯を製作するシステムの利点はつぎのとおりです。
- 咬合採得、ゴシックアーチの描記、フェイスボートランスファー、上下顎同時印象をわずか1回で行うため、合理的であると同時に来院回数の減少が図れる。
- 咬合採得した位置で最終印象を行うため、顎位の誤差を生じない。
- 印象採得中に嚥下を行わせるため、口腔周囲筋の印象採得が可能である。
- 最終印象をフェイスボートランスファーし、咬合器に付着できる。
- 印象面に口腔周囲筋、口唇、舌の形態を再現することができる。
- ニュートラルゾーンに人工歯を排列できる。
- サブリンガルルームを利用することにより舌による良好な維持が期待できる。床を後舌骨筋窩まで延長する必要がなく、舌の動きを阻害することがない。
- イボカップシステムの応用により重合収縮を補正し、適合が良好なため、ウォーターフィルム減少を得ることができ、維持がよい。
- 顎堤が極度に吸収している症例でも、頬筋、口唇、舌の維持ができる。
咬合採得は今までは蝋堤でやっていました。
最近、開発したSIバイトトレーを使うようになってから、咬合採得なんて面倒くさい事やる必要がなくなりました。
と稲葉先生(^_^;
そして、 昨年に引き続き、今回も、近代総義歯学の基礎を築いた、スイスの歯科医師のAlfred Gysi(アルフレッド・ギージー)の歴史を勉強しました。
Gysiはカンペル氏の平面のコンセプトを作ったり、 シンプレックス咬合器、トゥルバイト人工歯の開発など、沢山の業績を残しています。
今回、90年前の『ギージーフィルム』(和田精密技研)をご覧いただきました。
ピッチングテストの様子です。
ギージーが咬合器に付着している様子です。
切歯路角を調整しています。
90年前の総義歯の制作方法、今はどうでしょうか。
これ以上の総義歯を作っていますか?
せめて、これを超えないといけないと思います。
ということで、後半に移ります〜♪
2013年06月24日 | コメント (0) | トラックバック (0)
2012『総義歯ライブ実習コース』開催されました☆
こんにちは。
IPSG事務局、稲葉由里子です。
2012年7月14.15.16日『総義歯ライブ実習コース』 が開催されましたので、ご報告させていただきます☆
今回も全国から沢山の先生方にお集まりいただきました^_^
今回の患者様は63歳女性です。
稲葉歯科医院の患者様で、もともと歯周病治療で通われていましたが、数年前に総義歯となり今回、ご協力いただくこととなりました。
一日目はスタディーモデルの印象です。
今回新しく開発したSIバイトトレーを初めて使ったシステムで進めていくことになりました。
SIバイトトレーとは、スタディーモデルを中心位でトランスファーするためのトレーです。
上下顎同時印象を実行する場合に重要な事は、個人トレーとゴシックアーチの描記に使用する装置を製作しなければなりません。
今までは、スタディーモデルを咬合器にトランスファーする際、平均値で製作していたので多少の誤差を生じることがありました。
その誤差を精密印象時に修正していましたが、今回開発されたSIバイトトレーを用いると、より精度が増し、最終印象まで、スムーズに進むことができるようになりました☆
スタディーモデルの印象を採った後、SIバイトトレーにパテタイプのシリコン印象材を盛り、口の中へ入れ、噛んでいただきます。
その際、中心位で噛ませてください。
そして、フェイスボートランスファーを行うために六角棒を装着。
この状態で、咬合高径もだいたい決定させます。
ダヴィンチの比例法を用いています。
KaVoのフェイスボーを使って、正中を記録します。
SIバイトトレーを口の中から取り出します。
SIバイトトレーを用いると、このように上下の模型を簡単に咬合器に付着する事が出来ます。
これを思いついた稲葉先生はすごいと思います。
SIバイトトレーには六角棒が入る穴が二つあり、記録がずれないように固定する役割と、トランスファースタンドに六角棒が当たらないように、ずらすことで、同じ状態を再現することが可能です。
SIバイトトレーで精度の高い個人トレーを製作し、いよいよ上下顎同時印象です☆
ガンタイプの印象材を口腔内に注ぎ込み、
嚥下をしていただきます。
先生方にもじっくりご覧いただきました^_^
上下顎同時印象法による、口腔内のすべての情報をコピーした、印象です。
素晴らしいですね☆♪
技工はIPSG技工インストラクターの、岡部宏昭先生です。
岡部先生は、Dr.Schleichの総義歯コースのインストラクター、阿部晴彦先生の元技工インストラクターで、その腕は世界一といってもいいと思います。
もちろん、今回も稲葉先生と岡部先生のコラボは最強でした☆
重合は、イボカップシステムです。
この方法が開発されて30年以上経過しますが、いまだかつてこの重合方法を上回るものはありません。
保険の義歯とイボカップを重合方法を比べると、その精度の差は明らかです。
そして、イボカップで重合した義歯は、保険の義歯と比べて、着色、臭いを吸収しにくいので、入れ歯洗浄剤を使う必要はあまりないということ、通常のように歯ブラシに少し歯磨き粉を使っていただくだけでも十分だというお話もありました。
ポリデントは厳禁です。
義歯の色が白くなってしまいます。
「え?そうなの?!」←私
先生方も気を付けてください・・・・^_^;
重合方法のお話のあと、義歯をイボカップから取り出し、研磨作業です。
この作業がとても勉強になりました。
患者様への義歯の修理のヒントなどを沢山得ることができました。
オーバーインプレッションの部分をどのように研磨するのかなど、ヒントが沢山ありました。
ブルーの線は顎舌骨筋線、ここから下はすべてとってしまいます。
この部分は、舌の動きのじゃまをしてしまいます。
「また、このように外側から押すと、義歯がスポンっと外れてしまいますよ」
と岡部先生^_^
そして3日目、いよいよセットです☆♪
「ほら、全然外れない」
と自信満々な稲葉先生。
すべての先生方に確かめていただきました。
先生方、びっくりすると笑ってしまうようです・・・
こちらの先生も、うれしそうに笑いながら確かめてくださっています。
上顎の吸着もすごいですが、
下顎だって外れません。
私も心配だったので、触らせていただきましたが、安心な吸着ぶりでした☆
ライブなので、何があるかわかりません。
患者様も毎回違います。
会員の先生からご紹介いただいた難症例の方をライブで実習したこともあるこのコース、本当に大盛況でした☆♪
そして完成した総義歯がこちらです!
↓ ↓ ↓
上顎の口蓋はイボカップシステムの重合により、透けるほど薄いです。
下顎の形も特徴的ですね♪
芸術的です^_^
何より、患者様に一番喜んでいただきました。
ワクワク、うれしくて前の晩は寝れなかったとおっしゃってくださり、
「最高の総入れ歯です」
と言葉をいただきました。
すべて、DVDに記録をしてあるので、患者様の声を含め一連の作業をご覧いただくことができます。
セット後すぐに先生方の前で一緒に食事をしました。
お弁当の中で、一番食べずらい物を稲葉先生勧めます。
ごぼう、イカ、こんにゃく、ゴマのついたおしんこなどです。
患者様が奥歯へ食べ物を持っていこうとすると、
「だめだめ、前歯で噛み切ってね」←稲葉先生
義歯は前歯で噛み切ることが一番苦手ですね。
なんでも食べることができました。
痛いところもないそうです。
まさに究極の総義歯を見ることができました(^_-)-☆
先生方からも沢山の感想をいただいたので、一部ご紹介させていただきます。
*:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:゜・:,。*:.。o○☆゜・:,。
◆世界最高の義歯への道のスタートラインに立つことができました。感謝します。一流の技に触れることができとても幸せです。一つ一つ実践し、自分のものにしたいと思います。ちょうどこの講習会に参加しはじめて丸一年がたちました。ありがとうございます。顎関節症、咬合、義歯等色々勉強させていただき、臨床が楽しくなりました。
◆素晴らしいです。全て理にかなった手法だと思います。
◆わずか3日間という短期間で、これ以上ないくらいの完成度の総義歯が出来上がるということをこの身をもって体験させていただき、ありがとうございました。
◆本物を確信しました。
◆究極の総義歯のDVDを何度も繰り返し見て勉強していましたが、今回の実習で生で見ることでわからなかった部分がよく理解出来ました。上下顎同時印象による総義歯のシステムはすべてが計算しつくされていて、まさに究極だと思いました。岡部先生のセミナーも受講して早く実践できるようになりたいと思います。
◆6月の講義からこのライブ実習までとても楽しみでした。アキュトレーを使ったスタディーモデルの印象からSIバイトトレー、上下顎同時印象など、どのステップも規格化されており、臨床にすぐに活用できそうです。実際に患者さんの吸着を触れることができて、その吸着力に驚きました。明日からの臨床、頑張れそうです。今日もありがとうございました。
◆総義歯のイメージを新たにしました。ありがとうございました。稲葉先生のお話の中に出てくるデンチャーセミナーを過去に受けたことがありますが、この方法をぜひ自分に身に付けたいと素直に思いました。今後共、ご指導ご教授の程よろしくお願いいたします。
ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました。
このような素晴らしいセミナーを開催できたのも、先生方が純粋に勉強をしたいというお気持ちと、積極性によるものだと感じます。
会場を提供してくださったKaVo Dental Systems Japanの方々、田中歯科機械店の方、そしてスタッフの皆様に心より感謝いたします。
2012年07月17日 | コメント (0) | トラックバック (0)
総義歯ライブ実習コース開催されました!
2010年7月17,18,19日「総義歯ライブ実習コース」が開催されました。
こんにちは
3日間お世話様でした。
とにかくスゴイの一言でした。
治療のそれぞれの過程で稲葉先生と技工士の岡部さんからの的確な説明があり非常に勉強になりました。
最後の吸着状態を実際に患者さんの口腔内で確認させていただきましたが、
今までに経験したことがない吸着状態でした。特にどんなに引っ張っても取れない下顎の吸着には感動しました。
また咬合状態もフルバランスがしっかり付与されているので、前方、側方運動時にまったく動くことがなくその状態もほんのわずかな調整(無調整といってもいいくらい )でできたことにもびっくりでした。
適合状態もみましたが、若干の辺縁をこする程度の調整のみでした。
とにかくすべてにおいて自分が見てきた義歯の中では間違いなく最上級のものであったと思います。
最後に患者様がその場でお弁当をたべてみせてくださいましたが、筍はしっかり前歯で噛み切っていましたし、こんにゃくもたくわんも何の問題もなく食べている姿を見て、さらにびっくりでした。
食後の義歯内面をみましたが、食片が入った痕跡はなく
まさに究極の総義歯でした。
この治療を自分のものにしたいですね。まずは実践をしたいと思います。
本当にありがとうございました。
埼玉県開業 K.K 先生
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
この文章、いただいたものそのままお伝えしています。
私がお伝えするよりもずっとすばらしい感想をいただきまして、本当にありがとうございました。
そのほかにもたくさんのコメントをいただきました!!
稲葉歯科医院の技工士も手伝いで参加をしたのですが、
「完璧だったよ。スムーズにいつもの吸着だったし。」
と言っていました。
今回、技工は歯科工房OKABE代表の岡部宏昭先生にお願いしました。
岡部先生は総義歯の権威、稲葉先生も総義歯のすべてを学んだというDr.shleich の技工担当として日本中をまわったり、数々の有名な総義歯の先生の技工を担当してきた超ベテランの技工士です
2010年07月22日 | コメント (0) | トラックバック (0)
上下顎同時印象、本システムの利点
上下顎同時印象法を行って、総義歯を製作するシステムの利点はつぎのとおりです。
①咬合採得、ゴシックアーチの描記、フェイスボートランスファー、上下顎同時印象をわずか1回で行うため、合理的であると同時に来院回数の減少が図れる。
②咬合採得した位置で最終印象を行うため、顎位の誤差を生じない。
③印象採得中に嚥下を行わせるため、口腔周囲筋の印象採得が可能である。
④最終印象をフェイスボートランスファーし、咬合器に付着できる。
⑤印象面に口腔周囲筋、口唇、舌の形態を再現することができる。
⑥ニュートラルゾーンに人工歯を排列できる。
⑦サブリンガルルームを利用することにより舌による良好な維持が期待できる。床を後舌骨筋窩まで延長する必要がなく、舌の動きを阻害することがない。
⑧イボカップシステムやPVPMの応用により重合収縮を補正し、適合が良好なため、ヲーターフィルム減少を得ることができ、維持がよい。
⑨顎堤が極度に吸収している症例でも、頬筋、口唇、舌の維持ができる。
さらにこのシステムを応用し、オーラルディスキネジアや、脳卒中後の麻痺のある患者さんに対してよい成績を上げています、顎関節症を伴う総義歯患者においてもよい成績をあげています。
2010年05月28日 | コメント (0) | トラックバック (0)
従来の義歯の欠点
【上下顎を別々に印象採得する欠点】
上下顎を別々に印象する従来の欠点はつぎのとおりです。
①機能時の口腔周囲筋、口唇、舌の印象が不可能
②閉口時の印象採得が不可能
③上下顎に平均した圧力をかけなれない
④印象圧と咬合圧が同一ではないために患者の筋圧とは異なる
⑤術者主導の筋圧形成であるために患者さんの筋圧とは異なる
⑥開口印象では義歯の最後方の翼突口蓋縫線が延び切り、閉口時に空気の進入を防止できない
2010年05月28日 | コメント (0) | トラックバック (0)
最終印象を上下顎一対で採得する方法とは?
わが国における総義歯の歴史のなかには、世界最古のも木床義歯の歴史が含まれる、それは1538年に当時としては長寿の74歳で往生した紀伊・和歌山の願成寺の草創者・仏姫の拓殖の木から作った木床義歯です。当時は現在のように優れた印象材や模型材もなく、咬合器もない時代に、適合性に優れ、噛める義歯を作ることができたものであると、感心してしまいます。当時の義歯の製作方法を調べてみると、非常に合理的であり、仏教芸術の伝統を受け継いでいることがうかがえます。
その製作法の鍵は、蜜蠟を使った印象採得と咬合採得を同時に行うことです。これは蜜蠟を鍋で温め、それを一塊として患者さんの口腔内に入れ、咬合位を決定した後に口腔内の形を採得するというものです。
一塊にしたものを上下顎に分けたのであるから、正確な咬合位の再現が化のになるのは当然です。
これまでの総義歯では上下顎の印象を別々に行うことが普通です。そのため正確な咬合関係の再現はかなり難しいです。
上下顎別々に印象採得を行い、その後上下を合わせて義歯を作るより、上下を一塊として口腔内より取り出しそれを2つに分割し、再び元に戻すような義歯製作のほうが理想的です。
このような理由から上下顎を同時に印象し、これを正確な咬合器に付着した後に上下に分け、精密な人工歯で再び上下顎歯列を1つに咬合させる方法が望ましいです。
稲葉繁の考案したシステムは、最終印象の際に上下顎を同時に印象し、そのままフェイスボートランスファーを行い、咬合器に付着した後に上下に分け、精密な人工歯で排列を行い、上下顎歯列を1つに咬合させる方法です。
2010年05月28日 | コメント (0) | トラックバック (0)
Dr.shleichとの出会い
1978年、当時西ドイツのチュービンゲン大学歯学部補綴学講座ケルバー教授のもとに留学していた頃、イボクラール社のナソマート咬合器の研修会を受講しました。
そこで、同社の補綴部長をしていたDr.shleichによる総義歯の研修会に参加するチャンスを得て、初めてイボトレーを用いたアルギン酸印象材で行った上下顎同時印象によるスタディーモデルを見ました。
さらにその模型をコーディネータという水準器のような精密な器械を用いて正確に模型をマウントし、最終印象のためのゴシックアーチ描記装置を組み込み、精密印象を行うというテクニックでした。
人工歯排列、イボカップによる重合など見るものすべてが目新しく、日本では行われていない精密なテクニックでした。
しかし、このテクニックを用いてもデンチャースペースの印象は完璧ではなく、その後に稲葉繁が考案した最終印象を上下顎同時印象するシステムのきっかけになりました。
写真は平成5年に稲葉繁が代表を務めるIPSG包括歯科医療研究会発足の際、デモを行っていただいたDr.shleichとの記念に残る1枚です。
今でも家族同士の付き合いは続いています。
Dr.shleichが引退する際、彼の資料をすべて託されました。 膨大なスライドです。Dr.shleichの素晴らしい技術をさらに改良したのが、現在の「上下顎同時印象法による総義歯」です。
Dr.shleichがスタディーモデルまで、上下同時に印象をとっていたのに対し、稲葉繁は最終印象まで「上下顎同時印象」に改良したのです。
それをDr.shleichに説明したところ、素晴らしい、と喜んでおられました。 そしてこの技術を日本中、世界中に広めてほしいと強く希望されました。
稲葉繁先生の自宅、ホームパーティーにケルバー教授とシュライヒ先生を招いた、これも貴重な1枚です。